銀河団(読み)ギンガダン(その他表記)cluster of galaxies

デジタル大辞泉 「銀河団」の意味・読み・例文・類語

ぎんが‐だん【銀河団】

数百個ないし数千個の銀河集団星雲団

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精選版 日本国語大辞典 「銀河団」の意味・読み・例文・類語

ぎんが‐だん【銀河団】

  1. 〘 名詞 〙 数百個から数千個の銀河の集団。規模の小さいものは銀河群という。

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改訂新版 世界大百科事典 「銀河団」の意味・わかりやすい解説

銀河団 (ぎんがだん)
cluster of galaxies

差渡しが数千万光年程度の宇宙空間に,数百から数千の明るい銀河が密集しているもの。われわれの銀河系にもっとも近い顕著な銀河団はおとめ座方向,約5900万光年のかなたにあって,約2500個の明るい銀河が集まっている。このように比較的近いところにある銀河団は,天球上でも数度から数十分角の広がりを示すために,それが見える星座の名を冠して,おとめ座銀河団,ペルセウス座銀河団のように呼ばれる。同一星座内に複数個の銀河団がある場合には,ペガスス座Ⅰ,ペガスス座Ⅱのように,ローマ数字をつけて区別される。われわれの銀河系から35億光年以内の距離には19個の顕著な銀河団が知られている。遠方の銀河団までの距離は,その構成銀河のスペクトル線が示す赤方偏移をもとに,ハッブルの法則を適用して求められる。ここではハッブルの定数を60(km/s)/Mpc(1Mpc=3.08×1019km)として推算される距離と直径を示したが,ハッブルの定数そのものを決定するのに,顕著な銀河団中のもっとも明るい銀河の光度を一定とみなして導く方法も利用されている。銀河団はその構成銀河の総数と集合の度合によって,勢力指数richness classを用いて分類されるほか,分布領域が扁平か球状かといった形状によっても分類される。集合の内部的構造に着目した分類としては,銀河団の中心付近にcD銀河と呼ばれる超大型の楕円銀河が存在するかどうか,またそれが存在する場合にはその個数や集合度を分類の規準とするバウツ=モルガン型と呼ばれるものがある。銀河団中での各構成銀河間の力学的な相互作用の影響の度合は,星団中における恒星間の場合に比べると幾桁も強く,銀河どうしの衝突も,宇宙の進化の時間尺度(約100億年)では,決して珍しくないと考えられている。中心付近にある超大型銀河がこのような力学的相互作用の結果生ずる,銀河の融合によって育っていくとする考え方もある。一般的に,銀河団を構成する明るい銀河には,楕円銀河とレンズ状銀河が多く,渦巻銀河は少ない。この傾向が,とくに銀河団の中心付近で顕著だという主張もある。逆に,銀河団に属さない散在銀河には,比較的多くの渦巻銀河が認められる。これも,銀河団中の相互作用に起因するとする説もある。銀河団の銀河間空間は希薄なガスで満たされていて,かみのけ座銀河団をはじめとする多くの銀河団について全体を包むように広がって分布する高温ガスからのX線放射が観測されている。X線スペクトルは,太陽系物質と同程度以下の重元素組成をもつと思われる106~107Kのガスの存在を示している。銀河団中の構成銀河やガスの空間運動が相互の引力作用とつり合っていて,銀河団の形状をほぼ平衡に保っていると考えると,銀河団の総質量を推算できる。このようにして求めた力学的推算質量が,観測される各銀河の明るさから推算される光学的推算質量の数十倍から100倍にも達するため,見えない物質が銀河団中に大量に存在すると考えられている。このことは重力レンズ効果としても認められつつある。いくつかの銀河団が連なって,超銀河団を形成している例もあり,逆に,銀河団を超銀河団の稠密(ちゆうみつ)部分とみなすこともできそうである。この種の宇宙の巨大構造は,宇宙の進化,銀河の発生などの謎を解くうえでの重要な手がかりとされている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「銀河団」の意味・わかりやすい解説

銀河団
ぎんがだん
cluster of galaxies

50個ないし数千個の銀河の集団をいい、直径は数百万光年ないし数千万光年である。さらに大規模なものは超銀河団といわれる。銀河団の代表例としては、おとめ座銀河団(成員数1000~2000個、距離5900万光年、直径1200万光年)や、かみのけ座銀河団(成員数1000個以上、距離2.9億光年、直径2000万光年)がある。星団に散開・球状の2型があるように、銀河団にも不定形で集中度の低い型(おとめ座銀河団など)と、球状で集中度の高い型(かみのけ座銀河団など)があり、後者では成員銀河に楕円(だえん)型が多いという事実が知られている。アメリカのパロマ山天文台、およびイギリスがオーストラリアに建設した、南北両半球のシュミット望遠鏡による、全天写真サーベイが一段落した1980年末、その写真をもとに、エイベルGeorge Ogden Abell(1927―1983)、コーウィンHarold G. Corwin Jr.、オロウィンRon P. Olowinの3人は共同で、銀河団カタログとしてはもっとも総合的なACOカタログ(4076個の銀河団についての、分類型や測定された諸データを収載)を作成した。

[高瀬文志郎]

『小尾信彌著『銀河の科学』(1989・日本放送出版協会)』『小山勝二著『X線で探る宇宙』(1992・培風館)』『ハインツ・R・パージェル著、黒星瑩一訳『星から銀河へ――ハーシェルの庭』(1993・地人書館)』『岡村定矩著『銀河系と銀河宇宙』(1999・東京大学出版会)』『半田利弘著『はじめての天文学』(2000・誠文堂新光社)』『岡村定矩編『天文学への招待』(2001・朝倉書店)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「銀河団」の意味・わかりやすい解説

銀河団
ぎんがだん
cluster of galaxies

数千個の銀河からなる巨大な銀河の集団。より小規模な数個から数十個の銀河の集まりは銀河群という。恒星が集まって星団をつくるように,銀河は数個から数千個集まって集団をつくっている。銀河団の直径は数百万~1000万光年で,銀河と銀河の間の銀河間空間は銀河間ガスと呼ばれる高温のプラズマで満たされており,X線で輝いている。銀河や高温ガスのほかに,銀河団には多量のダークマターが存在し,その質量は銀河やガスの質量よりもはるかに大きい。すなわち銀河団の力学的な構造は主としてダークマターによってつくられ,その重力場の中を銀河が秒速 1000kmほどで運動し,高温ガスが集まっている。銀河団の形態には,直径数百万光年に銀河が密集したものと,1000万光年の広い空間に分布する散開型のものがある。われわれの銀河系に最も近い銀河団は散開型のおとめ座銀河団で,その距離は 5000万光年,直径は 500万光年ほどである。密集型のものでは距離 1億光年のところにかみのけ座銀河団がある。

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百科事典マイペディア 「銀河団」の意味・わかりやすい解説

銀河団【ぎんがだん】

かつては星雲団とも。直径が数千万光年くらいの宇宙空間に,数百から数千の明るい銀河が密集しているもの。たとえば銀河系に最も近いおとめ座銀河団は約6200万光年離れたところにあり,約2500個の明るい銀河が集まっている。銀河団を構成する銀河どうしの力学的相互作用は強く,銀河どうしの衝突,融合も起こり,中心付近の大型銀河はこの結果できたと考えられている。銀河団の銀河間の空間は希薄なガスで満たされていて,かみのけ座銀河団をはじめとするいくつかの銀河団ではX線放射が観測されている。いくつかの銀河団が網目状に集まって超銀河団を形成しているものもあり,これが宇宙の大局的構造と考えられている。

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知恵蔵 「銀河団」の解説

銀河団

銀河群」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の銀河団の言及

【宇宙】より

… 宇宙の物質は無数の銀河に分かれており,われわれの銀河系はこの一つである。銀河は一般に,数十個から数千個ほどで集団(銀河団)をつくっている。例えばわれわれの銀河系は,アンドロメダ銀河や大小のマゼラン銀河など約20個の銀河で小さな集団をつくっており,おとめ座銀河団はわれわれにもっとも近い大規模な銀河団で約2500個の銀河で構成されている。…

※「銀河団」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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