出羽弁(読み)いでわのべん

改訂新版 世界大百科事典 「出羽弁」の意味・わかりやすい解説

出羽弁 (いでわのべん)

平安中期の女流歌人生没年不詳。1078年(承暦2)以後高齢で没した。出羽守平季信の女。後一条天皇の中宮威子の女房となり,中宮の没後,一品宮章子内親王に仕え,のち六条斎院禖子内親王の女房となる。源為善・経信と交流,美作守源資定と結婚し,皇后宮美作をもうける。《栄華物語》続編第1部にしばしば登場し,その作者に擬される。《祐子内親王家歌合》《禖子内親王家歌合》に出詠。《後拾遺集》以後の勅撰集に16首入集。家集《出羽弁集》を残す。
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朝日日本歴史人物事典 「出羽弁」の解説

出羽弁

生年:生没年不詳
平安時代の歌人。出羽守平季信の娘。後一条天皇の中宮威子やその娘の後冷泉天皇の中宮章子などに仕え,『栄華物語』では「いとをかしうすき者なるものから,有心なる(風流を解し思慮深い)」と評され,優れた女房として重んじられた。威子の死後,人びとに,出羽弁は悲しみのあまり死ぬのではないか,といわれたほど主人思いでもあった。歌人として,源経信一族とはことに親しく,また『栄華物語』巻31から36は,現存する家集『出羽弁集』とは別の彼女の家集がもとになっているといわれる。代表歌は,忍ぶ恋を歌った「忍ぶるも苦しかりけり数ならぬ身には涙のなからましかば」など。<参考文献>松村博司「出羽弁の生涯」(『歴史物語考その他』)

(安隨直子)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「出羽弁」の解説

出羽弁 でわのべん

?-? 平安時代中期の女官,歌人。
平季信(すえのぶ)の娘。寛弘(かんこう)(1004-12)のころ一条天皇の中宮(ちゅうぐう)藤原彰子(上東門院),のち後一条天皇の中宮藤原威子(いし),その娘の章子・馨子(けいし)内親王につかえる。藤原兼房,源経信,弁乳母(べんのめのと)らと歌を通じて親交があった。「いでわのべん」ともよむ。家集に「出羽弁集」。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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