中宮(読み)チュウグウ

デジタル大辞泉 「中宮」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐ぐう【中宮】

禁中内裏のこと。
皇后御所。転じて皇后の別称。
皇后・皇太后太皇太后三后のこと。
平安中期以後、皇后以外で、皇后とほぼ同格きさきのこと。
一つの神社で複数の社があるとき、中ほどの位置に建てられた社。→上宮じょうぐう下宮げぐう
[類語]きさき皇后皇太后妃殿下王妃女王皇太子妃北の方プリンセス

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精選版 日本国語大辞典 「中宮」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐ぐう【中宮】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 奈良時代、ひろく宮門内、すなわち禁中。内裏。
    1. [初出の実例]「天皇御中宮」(出典:続日本紀‐養老七年(723)正月丙子)
  3. 太皇太后・皇太后・皇后の総称。三宮の総称。〔令義解(833)〕 〔周礼注‐天官・内宰〕
  4. 皇太夫人、すなわち天皇の母の別称。奈良時代、聖武天皇の母藤原宮子を中宮と称してから始まる。
    1. [初出の実例]「勅。頃者中宮不予。稍経旬日、雖医療、未応験」(出典:続日本紀‐延暦八年(789)一二月庚寅)
  5. 平安時代、皇后の別称。
    1. [初出の実例]「以女御従三位藤原朝臣穏子中宮」(出典:日本紀略‐延長元年(923)四月二六日)
  6. 平安時代以降、天皇の妃。皇后のほかに並立した。一条天皇の代に、藤原道長の女彰子が入内(じゅだい)して中宮となり、それまでの中宮定子(藤原道隆女)を皇后としたのに始まる。
    1. [初出の実例]「弘徽殿の女御中宮のかくておはするを折ふしごとに安からずおほせど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)花宴)
  7. 中宮の御所。
    1. [初出の実例]「中宮などには、縫殿より御薬玉とて、色々の糸を組み下げて参らせたれば」(出典:枕草子(10C終)三九)
  8. 神社の社殿の称の一つ。傾斜地に立地する社殿を分けて、上宮・中宮・下宮ということがある。

中宮の語誌

→「こうごう(皇后)」の語誌


なか‐の‐みや【中宮】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「中宮(ちゅうぐう)」の訓読み ) 皇后・皇太后・太皇太后の三宮のこと。また、皇后のこと。
  3. なか(中)の宮

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日本歴史地名大系 「中宮」の解説

中宮
ちゆうぐう

中宮三社(中宮・佐羅宮・別宮)の中核をなし、白山七社を構成した。吉野谷村中宮に所在する笥笠すがさ中宮神社はその社名を継承したらしい。中宮長吏隆厳によって校注を加えられたという「白山之記」によると、「笥笠中宮」(かつては「けがさ」と称したという)と号し、神殿・拝殿・彼岸所、講堂(本尊大日如来)・新宝殿・金峰山きんぷせん小白山こはくさん・不動山、常行じようぎよう(本尊阿弥陀如来)・法華三昧さんまい(本尊普賢菩薩)・不動堂・堂・鐘楼などで構成され、近辺にいち橋・酒殿さかどの社・濁澄にごりすみ橋などがあった。中宮三社は、白山七社のなかで本宮四社とは別個の勢力圏を能美のみ郡・江沼えぬま郡方面に伸張していた。中宮三社の統制下にあったと考えられる寺院としては、「白山之記」にみえる白山五院の柏野かしわの寺・温泉おんせん寺・極楽寺・小野坂おのざか寺・大聖だいしよう寺が江沼郡に、中宮八院の護国寺・昌隆寺・松谷寺・蓮花寺・善興寺・長寛寺・涌泉ゆうせん寺・隆明寺は、隆明寺を除き軽海かるみ(現小松市)に所在したほか、那谷なた(岩屋寺・岩蔵寺とも。現小松市)温谷うたに(護法寺とも)・栄谷寺の中宮末寺「三ケ寺」などがあった。

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百科事典マイペディア 「中宮」の意味・わかりやすい解説

中宮【ちゅうぐう】

天皇の后(きさき)。律令制では皇后・皇太后・太皇太后の居所をさし,転じてその総称となった。中務(なかつかさ)省中宮職(しき)に事務を担当させた。平安初期までは皇后の別称だったが,藤原道長がその娘を皇后とは別に中宮としてから,皇后以外の后の称となった。→藤原彰子藤原定子
→関連項目郁芳門院後一条天皇皇嘉門院待賢門院高倉天皇東福門院中山忠親女御藤壺

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改訂新版 世界大百科事典 「中宮」の意味・わかりやすい解説

中宮 (ちゅうぐう)

平安時代の令の注釈書《令義解》は皇后の居所である皇后宮の別称であるとし,したがって太皇太后宮皇太后宮もまた中宮と称したのだとする。このことから中宮は皇后,皇太后,太皇太后の別称ともみられるが,公式令では皇后などが平出(へいしゆつ)すべき称であるのに対して,中宮は闕字(けつじ)すべき称であり,それだけ略称的な呼称であったかもしれない。《続日本紀》では中宮を個人と居所との両様につかっており,前者には藤原宮子,高野新笠,当麻山背等が相当する。したがって皇太夫人の別称であって,皇后の別称ではない。後者は平城宮内にあって,推定第1次内裏にあったとする所説と,推定第2次内裏にあったとする所説とがある。また後者が前の中宮個人の居所であるかどうかの確証はない。平安中期にいたって中宮を皇后の別称として通用するようになったが,さらに一条天皇の彰子と定子のときに二后併立の制度がさだめられたため,中宮と皇后とは区別されることになった。
皇后
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中宮」の意味・わかりやすい解説

中宮
ちゅうぐう

皇后の居所の称。転じて皇后の別称となる。令(りょう)制では太皇太后宮、皇太后宮を加えた三后の称ともされたが、聖武(しょうむ)天皇の生母藤原宮子(みやこ)が皇太夫人としてとくに中宮職(しき)を付置され、中宮とよばれてからは、奈良時代、平安前期を通じて、もっぱら皇太夫人の称となった。しかし皇太夫人は醍醐(だいご)天皇の養母藤原温子(おんし)を最後として絶え、同天皇の皇后藤原穏子(おんし)には、令制どおり、太皇太后で崩ずるまで一貫して中宮職が奉事し、中宮ともよばれた。ついで一条(いちじょう)朝(986~1011)に二皇后併立の例が開かれるに及び、それぞれ皇后宮職と中宮職が付置され、皇后宮(略して皇后)、中宮と称して区別されたが、明治以後、中宮職の廃止とともに、中宮の称も廃絶した。

橋本義彦

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中宮」の意味・わかりやすい解説

中宮
ちゅうぐう

律令制では,太皇太后宮 (天皇の祖母) ,皇太后 (天皇の母) ,皇后の三宮を中宮といい,平安時代以降には皇后および同資格の天皇の後宮をさした。一条天皇の正暦1 (990) 年藤原遵子 (じゅんし) の中宮を改めて皇后とし,藤原定子 (ていし) を中宮とした。ここに皇后と中宮が並立するようになったが,遵子は本来天皇の父円融天皇の中宮で,このとき皇太后に一条天皇の生母藤原詮子 (せんし) がなっていたため皇太后となれず,中宮と称していた。長保2 (1000) 年藤原道長の娘彰子 (しょうし) が中宮となり,定子が皇后となるに及んで,一帝に二后の立つ例が始った。このときから二后並立はときどき行われ,中宮が優勢であることが多かった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「中宮」の解説

中宮
ちゅうぐう

皇后の居所の意。大宝令では闕字の扱いをうけ,さらに太皇太后・皇太后や太皇太妃・太皇太夫人・皇太妃・皇太夫人までも含むキサキ,およびその居所の総称となった。また桓武天皇の生母で皇太夫人となった高野新笠(にいがさ)が中宮職を付置され中宮と称されてから,中宮職を付置された皇太夫人のなかには中宮と称された例もある。その後,一条天皇のときに二后並立制が成立すると,皇后宮職を付置された皇后を皇后と称し,中宮職を付置された皇后を中宮と称するのが例となった。なお「続日本紀」には殿舎域としての中宮がみられるが,宮内の位置にもとづく場合と中宮の居所にもとづく場合が考えられ,前者の考えによって中央区画の大極殿院に比定する説がある。

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旺文社日本史事典 三訂版 「中宮」の解説

中宮
ちゅうぐう

令制では皇后・皇太后・太皇太后の別称。平安時代には皇后につぐ后 (きさき) をさす
一条天皇のとき,藤原定子と彰子の2人が皇后に立つことになったので彰子を中宮と称してから,皇后につぐ后をさすようになった。皇后と同じ資格・待遇を与えられた。

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普及版 字通 「中宮」の読み・字形・画数・意味

【中宮】ちゆうきゆう

皇后。

字通「中」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の中宮の言及

【数】より

…中国人は地上における空間分割をまた天に投影して天を区分したのである。前2世紀ころの漢代では,天は北極を中心に,そこからの距離が36度の圏内にある決して沈まない星座を中官(ないしは中宮),その外側を囲み季節によって見え隠れする星座を外官(外宮)とし,外官をさらに四分割するのである。《史記》の東宮,南宮,西宮,北宮,のちの東方宿,南方宿,西方宿,北方宿がそれである。…

【中宮職】より

…令制官司の一つ。中務省に所属し,中宮の伝達命令の執行機関として設置された。皇后宮職の例からみて,中宮の家政的な実務も執行した可能性がある。…

【湯沐】より

…古代,皇太子および中宮に対する資養のために諸国におかれた経済制度。令制では臣下に対する封戸(ふこ)と同様のものらしく,《延喜式》では〈東宮湯沐二千戸〉とみえ,令制では〈中宮湯沐二千戸〉がみえる。…

※「中宮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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