日本大百科全書(ニッポニカ) 「分析・総合」の意味・わかりやすい解説
分析・総合
ぶんせきそうごう
analytic-synthetic
一般に知的活動の過程、方法、成果を特徴づける対(つい)概念であり、複雑な現象を単純な成分へと解体する手続が分析、逆に分析された結果から元の現象を再構成する手続が総合である。とくに哲学および論理学では、真偽を決定する手続に応じて判断の種類を区別する概念として用いられる。カントは、主語概念のなかに述語概念が含まれるような判断を分析判断(「馬は動物である」)、そうでないものを総合判断(「馬は足が速い」)と名づけた。ライプニッツの「理性の真理」と「事実の真理」の区別もほぼこれに対応する。現代では論理実証主義者が、分析判断を論理法則または定義に基づいて真なる命題、総合判断を経験的検証が可能な命題として解釈し直し、それ以外の命題を無意味なものとして退けた。しかしクワインは、分析的と総合的の二分法を「経験主義のドグマ」とよび、その区別は言語体系の選び方によって定まる相対的なものにすぎないとして批判した。
[野家啓一]
『クワイン著、中山浩二郎・持丸悦朗訳『論理学的観点から』(1972・岩波書店)』