日本大百科全書(ニッポニカ) 「初雁城」の意味・わかりやすい解説
初雁城
はつかりじょう
埼玉県川越(かわごえ)市の銘菓で、特産のサツマイモを主材料とした芋落雁(いもらくがん)。1457年(長禄1)太田道灌(どうかん)が江戸城と前後して築いた武州河越城は、月の光にぬれる館(やかた)と濠(ほり)を渡る雁(かりがね)の影の風雅さから、いつのころからか初雁城とよばれるようになった。その初雁城にちなんで、川越の名物芋「ベニアカ」が落雁につくられたのは1907年(明治40)、創作者は亀屋(かめや)5代目の山崎嘉七である。さつまいも粉50%、三盆白40%、かたくり粉ときな粉10%でつくるが、落雁の堅さは秋田諸越(もろこし)なみ、初雁城と篆書(てんしょ)風に押した唐墨(からすみ)のような長方形の菓子形は、金沢の長生殿を思わせる風格をもつ。亀屋では初雁城の4年前に芋煎餅(せんべい)の初雁焼を完成させている。
[沢 史生]