落雁(らくがん)の最高級品とされる金沢名物。石川県金沢市の老舗(しにせ)森八(もりはち)の名代菓子でもある。森八の始祖森下八左衛門が、縁者の大隅鉄斎に勧められて、越中(えっちゅう)井波の御所落雁を改良、1625年(寛永2)につくりあげた。江戸・本郷の藤村(ふじむら)羊かんとともに加賀百万石を代表する菓子として、今日に名声を伝えてきた。御所落雁のごまのかわりに浪花(なにわ)の本紅(べに)、甘味には堺(さかい)から取り寄せた砂糖を用い、加賀糯米(もちごめ)を使って紅白に打ちわけ、桃山風の華やかさを表現した。唐墨を模した典雅な姿は3代藩主前田利常(としつね)の考案、篆書(てんしょ)体の長生殿は小堀遠州の筆になる。江戸後期品質の優れた阿波(あわ)和三盆(砂糖の一種)が完成、これを用いていっそう華麗な打菓子となった。
[沢 史生]
中国、清(しん)初の戯曲。50齣(せき)(幕)。浙江銭塘(せっこうせんとう)の洪昇の作。孔尚任(こうしょうじん)の『桃花扇(とうかせん)』とともに清代の南曲の二大傑作と称される。唐の玄宗(げんそう)と楊貴妃(ようきひ)のロマンスを、白居易の『長恨歌(ちょうごんか)』に拠(よ)って筋を進め、貴妃の入内(じゅだい)、安禄山(あんろくざん)の乱、そして貴妃の死のあと、蜀(しょく)から都に帰った玄宗が、道士に命じて貴妃の魂を探させ、8月15日の夜、仙橋を渡って月宮に至り、貴妃と再会する。元(げん)曲では玄宗と楊貴妃の話を扱ったものが多かったが、南曲ではまれである。10余年に三たび稿をかえて成ったという苦心の作であり、聖祖がこの芝居を見て喜び、俳優に銀20両を賜ったという話は有名である。
[岩城秀夫]
『塩谷温訳『長生殿』(『国訳漢文大成 文学部17』所収・1923・国民文庫刊行会)』
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中国,清代の戯文。洪昇(1659-1704)の作。楊貴妃が唐の玄宗に寵愛されるに至る経緯から,安禄山の乱,馬嵬坡での死を描き,乱後,玄宗が法壇を設けて貴妃の霊を招き,道士が月宮に向かって仙橋を架け,玄宗を導いて貴妃と再会させる,という筋である。10余年の間に三たび稿をかえて成ったといわれ,孔尚任の《桃花扇》とともに,明初以来盛行してきた戯文の掉尾(とうび)を飾る作品である。
執筆者:岩城 秀夫
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「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...
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