劣後債(読み)レツゴサイ(その他表記)subordinated debentures

デジタル大辞泉 「劣後債」の意味・読み・例文・類語

れつご‐さい【劣後債】

破産または解散したときに、元利金の返済順位が最後になることを条件企業が発行する債券自己資本に近い性格をもち、資本増強に有用とされる。劣後社債
2. ⇒ジュニア債

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精選版 日本国語大辞典 「劣後債」の意味・読み・例文・類語

れつご‐さい【劣後債】

  1. 〘 名詞 〙 償還の優先順位が低く、他よりも後回しになる債券。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「劣後債」の意味・わかりやすい解説

劣後債
れつごさい
subordinated debentures

企業に一定の事由が発生して債務の返済が生じた際,一般無担保社債に比べて元利金の支払い順位が低い社債。一般債権の返済手続完了後に返済開始となるため,投資家にとっては投資保全(回収)の毀損リスクが高いが,その分,金利などの条件がよくなる場合が多い。一定の事由とは,通常,発行会社の破産宣告や会社更生法手続開始などであり,当該事由が発生した場合に支払いが劣後することが社債要項に契約条項(劣後特約)として明記される。その性格上,発行する企業にとっては,社債の一種でありながら,自己資本に近い効果が得られる。欧米では長期の劣後債を一定の範囲で自己資本に組み入れることが認められている。株式発行に伴う株式の希薄化(ダイリューション)による自社株価の下落を回避できることもあって,利用が多い。日本では銀行に対する国際的な BIS規制自己資本比率規制)の導入をうけて 1990年に劣後債発行が解禁となり,以後,利用頻度が高まっている。

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知恵蔵 「劣後債」の解説

劣後債

劣後債とは、当該債券への元利金の支払いを、一般債権(無担保債権を含む)への支払い後に行う劣後特約条項を付して発行される債券。従来、金融債の発行と類似するため、銀行の劣後債発行は認められていなかった。しかし、自己資本比率(BIS)規制上は自己資本として取り扱われることから、1990年7月の海外現地法人による劣後保証債発行を皮切りに認められるようになった。同種の劣後性債務である劣後ローンも、90年6月に解禁されている。優先株とは、利益の配当残余財産分配において、普通株に対し、優先的地位を認められた株式。議決権を制限することや、償還条項や普通株式への転換条項を付すこともある。銀行の場合、自己資本比率規制上の自己資本算入において、劣後性債務に比べて有利に取り扱われる。98年3月には金融システム安定化関連二法に基づき1.8兆円、99年3月から2002年3月までには金融機能早期健全化法に基づき8.6兆円の公的資金が、資本増強のため銀行等に劣後債、劣後ローン、優先株の形で注入された。

(吉川満 (株)大和総研常務理事 / 2007年)

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