改訂新版 世界大百科事典 「半不輸」の意味・わかりやすい解説
半不輸 (はんふゆ)
平安・鎌倉期において,所当・公事の一方ないしなかばを寺社等に免給し,残りを国衙が収める土地制度上のシステムまたはその土地を指す。1233年(天福1)の六波羅注進17ヵ条の1項に〈所当を国司領家に弁済し公事を寺家社家に勤仕せしむる所々これあり。また所当を国司に弁済し公事を権門御辺に勤仕せしむる地等これあり〉と,2型態の存在が指摘されている。後者の例としてはいわゆる雑役免田がこれにあたる。大和国に広範に存在する東大寺の雑役免田や興福寺の進官免田など多くこのたぐいである。一方,薩摩・大隅・日向3ヵ国にまたがる摂関家領島津荘の寄郡(よせごおり)などは前者の例である。荘園拡大過程で問題となる出作田や加納田,それに新開等に伴って成立する別符,封戸に代わり寺社に与えられる保(便補保(びんぼのほ))なども広義の半不輸領といえる。12世紀後半以降荘公区分の明確化にともない縮小に向かう。
執筆者:工藤 敬一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報