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公事 くじ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

公事
くじ

(1) 令制における公務,朝廷の儀式。 (2) 武家社会では訴訟,裁判。 (3) 鎌倉時代以後の荘園制下では雑税を意味する。公事と称したのは,それまでの田租が私 (荘園領主) 収入であったのが,公 (幕府) 収入と変ったことに伴う。

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デジタル大辞泉の解説

おおやけ‐ごと〔おほやけ‐〕【公事】

朝廷の政務・儀式・行事など。公事(くじ)。
「源氏の―知り給ふ筋ならねば」〈・紅葉賀〉
朝廷への奉仕。租税を納め、賦役(ぶやく)に従うことなど。
「武蔵国を預けとらせて、―もなさせじ」〈更級
公式に定まっているやり方。
「祭のほど、限りある―に添ふこと多く」〈・葵〉

く‐じ【公事】

公務。
朝廷の政務・儀式。
「今日は―ある日なれば、とく参らるらむ」〈大鏡・伊尹〉
中世、年貢以外の雑税夫役(ぶやく)の総称。
訴訟およびその審理・裁判。
「賢し人、出でて―ども定め申して」〈今昔・二・三三〉

こう‐じ【公事】

政府・官庁などのおおやけの仕事。公務。⇔私事
公共に関する事柄。⇔私事

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百科事典マイペディアの解説

公事【くじ】

〈くうじ〉とも読む。本来は朝廷の政務一般をさす。平安時代には儀式化した朝廷の行事の意であるが,荘園公領制下では年貢以外の雑税や夫役(ぶやく)を総称していう。荘園領主のほかに預所(あずかりどころ)・守護地頭下司(げし)・公文(くもん)などによる賦課があり,公用(くよう)ともよぶ。
→関連項目大浦荘門役関東御領検注江家次第地下請下地下地中分信太荘荘園(日本)荘家の一揆土一揆名寄帳人吉荘名主名・名田免田和佐荘

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世界大百科事典 第2版の解説

くじ【公事】

〈くうじ〉とも読む。もともとは朝廷の〈公(おおやけ)のこと〉すなわち政務一般をさす語。のち種々の意味をもつようになる。(1)平安時代の儀式化した朝廷の行事 節会(せちえ)や除目(じもく)など四季折々に,あるいは期日を定め,あるいは臨時に,年中行事として行われた。朝廷ではその運用について《延喜式》などの式で定めたが,式の編纂が行われなくなってからは,貴族が私的に著した《西宮記》や《北山抄》等の故実書に記された公事の実際が重視された。

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大辞林 第三版の解説

おおやけごと【公事】

個人的でないこと。公式のこと。 ↔ 私事わたくしごと 「いと馴れて疾く、…と-にぞ聞えなす/源氏 夕顔
政務。政治。 「源氏の-知り給ふすぢならねば/源氏 紅葉賀
宮中の儀式・行事。 「祭のほど限りある-にそふ事多く/源氏
朝廷への奉仕や租税。 「武蔵の国を預けとらせて-もなさせじ/更級」
規則・慣例などで決まっている事柄。決まりきったこと。 「声づかひ、もてなしさへ例の-なれど/源氏 宿木

くじ【公事】

〔「くうじ」とも〕
表だった公の事。
朝廷で行われる政務・儀式。 「 -ども繁く、春の急ぎにとり重ねて催し行はるるさまぞ、いみじきや/徒然 19
中世、年貢以外の雑税や賦役の総称。
訴訟。裁判。 「某はいままで、-をいたいた事もない/狂言・右近左近」
[句項目]

こうじ【公事】

おおやけの仕事や用事。公務。
おおやけに関する事柄。
▽↔ 私事

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

公事
くじ

中世、官物(かんもつ)、年貢(ねんぐ)と並ぶ主要な税目。本来「おおやけごと」と読まれたように、朝廷における政務や儀式・行事を意味し、それらに必要な経費は国庫でまかなうのがたてまえであった。平安時代後期になると財政難から「おおやけごと」の経費は臨時雑役(ぞうやく)として別途に徴収されるようになる。こうして公的な事業や職務の遂行に必要な物資を徴収する名目として公事が一般化する。公事には、内裏(だいり)造営、大嘗会(だいじょうえ)、伊勢(いせ)遷宮、官寺修造など勅命で全国的に課せられるもののほか、一宮(いちのみや)や国分寺の修理、河川改修など国衙(こくが)が一国内に課すものもあり、官人の往来に際しては送迎・接待も公事とされた。また中央官衙、貴族、武家、寺社も、それぞれ公的職務に携わっているとする立場から自己の所領・荘園(しょうえん)に対して公事を課し、家産経済を運営している。あらかじめ予想される1年間の儀式や行事の経費を恒例公事とよんで、徴収品目、量、納入期日を定め、計画的に賦課している。さらに必要に応じて臨時公事と称して恣意(しい)的な徴収もしばしば強行されている。官人や荘官・地頭(じとう)らも現地に臨んで公事を徴収したが、旅費、生活費から接待饗応(きょうおう)にまで及び、収取の拡大・強化が公事を名目に行われていることが注目される。公事の名目がしきりに用いられ、徴収品目もあらゆる物資から夫役(ぶやく)まで含まれることでしばしば万雑(まんぞう)公事などともよばれた。中世末期、いやでも避けがたいことといった意味で天然痘(てんねんとう)も「くじ」とよばれていたらしい。中世を通じて公事を名目とする徴収が繰り返されたのは、一方で公事を負担することが「おおやけごと」にかかわることと意識され、公民とみなされるための象徴的な意味合いが含まれていたものと考えられる。
 近世、公事は「おおやけごと」のなかでも、とくに裁判に用いられた。[富沢清人]
『網野善彦著『日本中世の民衆像』(岩波新書)』

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世界大百科事典内の公事の言及

【公事】より

…(1)平安時代の儀式化した朝廷の行事 節会(せちえ)や除目(じもく)など四季折々に,あるいは期日を定め,あるいは臨時に,年中行事として行われた。朝廷ではその運用について《延喜式》などの式で定めたが,式の編纂が行われなくなってからは,貴族が私的に著した《西宮記》や《北山抄》等の故実書に記された公事の実際が重視された。公事をとりしきったのは,上卿(しようけい)と呼ばれる公卿と弁官,外記,史等の官人であるが,やがて貴族の家柄の固定とともに,公事の知識を継承する家が成立し,その家では代々,日々の公事の実際を日記に書くことが行われた。…

【金公事】より

…江戸幕府法における民事訴訟(公事)のうち借金銀,売掛金などおもに利息付または無担保の金銭債権に関する訴訟の総称。本公事(ほんくじ)に対する概念で,金銀出入ともいう。…

【裁判】より

…とくに身分,家格,席順,土地の境界(境相論(さかいそうろん)),用水(水論)等の争いについては強硬にその主張を貫こうとした。裁判所の待合所である腰掛(腰掛茶屋)はおおむね繁忙であり,1774年(安永3)江戸には弁護士に類する公事宿(くじやど)が198軒もあった。もっとも公事宿は訴訟代理権を欠く訴訟補佐人にすぎず,庶民はその策略的技術を嫌って,内心は尊敬していなかった。…

【済口】より

…江戸時代の民事裁判手続(出入筋(でいりすじ))において,和解(内済(ないさい))が成立すること。民事事件(公事(くじ),出入物)では奉行所は終始内済を勧めるのであって,裁判のどの段階においても内済することが可能である。親類,町村役人のほか,寺院や公事宿(くじやど)(訴訟関係者の宿泊する宿屋で,主人・下代は弁護士類似の役割を果たす)などが仲介者(噯人(あつかいにん)・扱人)となるのが通常であった。…

【出入筋】より

…刑事裁判手続たる〈吟味筋(ぎんみすじ)〉に対する概念であるが,可罰的事案が出入筋で裁判されることもある。出入筋の訴訟事件を〈出入物(でいりもの)〉あるいは〈公事(くじ)〉と称し,これに〈本公事(ほんくじ)〉と金銭債権に関する〈金公事(かねくじ)〉の別があって手続を若干異にした。江戸時代には,当事者の人別(にんべつ)地を支配する領主がそれぞれ裁判権を有したが,他領・他支配に関連する訴訟,すなわち〈支配違(しはいちがい)え懸る出入〉や,武家を相手取る場合などは,原則として幕府評定所の管轄となる。…

【番頭】より

…畿内周辺の紀伊,近江,加賀,能登などに多くみられる。荘園領主に対する月次(つきなみ)の公事(くじ)(夫役(ぶやく)や綿,絹,酒などの雑公事(ぞうくじ))を勤めるために,荘園の下地(したじ)は幾つかのに編成されており,その番が公事をかけられる単位となっていた。このため荘園内の番の数は12ヵ月に割り振ることができるよう6の倍数になっているものが多い。…

【夫役】より

…本貫地からの逃亡は,労働力収奪を拒否する律令農民の抵抗の一形態であった。 11世紀から12世紀に,本格的に展開する荘園制社会における農民負担は,年貢と公事(くじ)であり,公事は雑公事(ぞうくじ)と夫役に区別されている。夫役は,領主や荘官の直営地である佃(つくだ)の耕作労働,築堤や池溝の整備,さらに道路の造作などの土木工事,年貢など貢納物の運搬労働,領主の邸宅の清掃労働などに大別することができる。…

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