改訂新版 世界大百科事典 「半檀家制」の意味・わかりやすい解説
半檀家制 (はんだんかせい)
家族がすべて同じ檀那寺(手次寺)に属する丸檀家(一家一寺制)に対して,家族の内に檀那寺の異なるものを含む寺檀関係をいう。複檀家,一家寺違制などとも呼ばれる。これが現存もしくはかつて存在したことが報告されているのは,熊本,佐賀,長崎,大分,広島,滋賀,岐阜,愛知,石川,新潟,山梨,東京,茨城の都県である。その様相は,男女別のもの,生家の戸主の檀那寺を変更しないもの,戸主の檀那寺に規制されて世代間で檀那寺を異にするもの,その他,まったく所属原理が不明なもの,などに分類されている。いずれにしても,婚姻などによって生家を離れたとき,檀那寺をどうするかということによって生起したものである。近世初頭にはこうした寺檀争論が多く起こったが,その過程で,地域によって一定の原則が成立したようである。その後,寺側の檀家確定の要求や寺請をめぐる藩側の一家一寺令などによって消滅していった。
→寺檀制度
執筆者:大桑 斉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報