直木三十五(さんじゅうご)の長編小説。1930年(昭和5)6月から翌年10月にかけて『大阪毎日新聞』『東京日日新聞』に連載。前・中編は31年誠文堂刊、後編は同年番町書房刊。島津斉興(なりおき)の世子斉彬(なりあきら)を廃し、斉興の愛妾(あいしょう)お由良(ゆら)の子久光(ひさみつ)を藩主にしようと画策する上士階級と、聡明(そうめい)な斉彬を世継ぎにと願う軽輩の武士階級との対立抗争として知られている幕末の薩摩(さつま)藩の御家騒動、いわゆるお由良騒動を素材にしている。激動する幕末維新の時代相を背景に、斉彬をめぐる上士・下士の二階級の争闘がスピーディーな文体で生き生きととらえられている。
[磯貝勝太郎]
『『南国太平記』全二冊(角川文庫)』
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