脂肪族カルボン酸RCOOHで通常炭素数6以上のものをいう。動植物体の油脂成分として,おもにそのグリセリンエステルの形で存在する。高級脂肪酸には飽和脂肪酸,不飽和脂肪酸,また一塩基酸,二塩基酸などが知られているが,自然界に存在するものは,おもに直鎖状の飽和または不飽和の一塩基酸である。天然の脂肪酸は炭素数は偶数で,とくに炭素数18を中心としたものが多い。融点は一般に分子量が大きいほど高く,飽和脂肪酸の場合は炭素数10以上では常温で固体,エチレン結合1個をもつ場合はその二重結合位置,シスcis,トランスtransの構造によって異なる。オレイン酸(C18,シス-9)の融点は13.3℃,エライジン酸(C18,トランス-9)は44.5℃である。不飽和度が高いほど融点は低くなり,またそのグリセリドは酸化されやすく,乾性油の性質を示す。高級脂肪酸はグリセリドとしての用途以外に,それ自身,セッケン,合成洗剤,塗料,合成樹脂原料として,またその金属セッケンは潤滑剤,塗料などのドライヤー,表面処理剤等に,工業原料としての広い用途をもっている。
高級脂肪酸は牛脂,ヤシ油,魚油などの天然油脂を高圧水蒸気下,またはニッケル触媒などを用いて加水分解し,蒸留して分離・精製する。近年は需要の拡大によって工業的に合成されるようになり,天然には存在しない炭素数が奇数のものをはじめ,さまざまな高級脂肪酸および高級脂肪酸の特性をもった化合物が合成されている。工業的合成法としては,(1)石油からn-パラフィンを分離し,それ自体またはα-オレフィンとして酸化,加水,CO付加などにより飽和脂肪酸を合成する方法,(2)エチレンを直鎖状に低重合し,カルボキシル基を導入する方法などが行われている。
また近年エイコサペンタエン酸(EPA)のような天然高度不飽和酸の生理活性が注目され,医薬分野などへの利用も広まっている。
執筆者:内田 安三
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鎖状モノカルボン酸のなかで分子量の大きいもの.すなわち,炭素数が6以上のものをさす.飽和酸はほとんどが固体であるが,不飽和酸の多くは液体である.水に不溶,エタノール,エーテル,四塩化炭素,ベンゼンなどの有機溶媒に易溶.分枝酸は直鎖酸よりも溶解性がよい.アルコール類と脱水縮合して,油脂,ろうを構成する.工業的には,界面活性剤,有機化合物の合成原料として広く用いられる.[別用語参照]脂肪酸
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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