日本大百科全書(ニッポニカ) 「博多水炊き」の意味・わかりやすい解説
博多水炊き
はかたみずたき
鶏肉を用いた鍋(なべ)料理の一種。博多水炊きの原点は中国、とくに蒙古(もうこ)地方に発祥した羊臛(ようかく)であるとみたい。ヒツジの内臓、脊髄(せきずい)などを煮て浸出した汁は、中国2000年の昔に健康増進食として用いられていたことが文献にある。博多水炊きは1281年(弘安4)博多元寇(げんこう)のときに、蒙古軍の上陸兵によって伝えられたものと考えられる。博多水炊きは、鶏肉を皮付き・骨付きのままぶつ切りにして高温で煮沸する。30羽ぐらいをいっしょに煮ないと、本当のうま味が出ない。浸出したスープが乳白色になるのは脂肪のためであるが、水炊きの主味はこの白濁スープにある。博多水炊きの鶏は、かつてはシャモ種を用いたが、いまはアメリカ種のコーニッシュとシャモとの混合種が比較的多く用いられている。
鶏肉のスープに、先の煮た鶏肉や、ダイコン、ニンジン、タケノコ、シイタケなど野菜も加え、火が通ったものからポンスをつけて食べる。水炊きのポンスには、徳島県のスダチか大分県のカボスなどの柑橘(かんきつ)類が用いられる。博多水炊きを除き、一般に水炊きといっているものは、煮汁が澄んでいる。
[多田鉄之助]