反復性腹痛(読み)はんぷくせいふくつう(英語表記)Recurrent abdominal pain

六訂版 家庭医学大全科 「反復性腹痛」の解説

反復性腹痛
はんぷくせいふくつう
Recurrent abdominal pain
(子どもの病気)

どんな病気か

 腹痛が少なくとも1カ月に1回(多くはほとんど毎日から週に1~2回)、3カ月以上にわたって続き、生活の障害となる場合をいいます。

原因は何か

 反復性腹痛は内臓などの異常が原因の場合(器質的疾患)と、内臓などに異常を認めない場合(非器質的疾患)の2つの群に分類されます。

 器質的疾患のなかには、消化性潰瘍(しょうかせいかいよう)胃・十二指腸潰瘍)、総胆管拡張症(そうたんかんかくちょうしょう)慢性便秘炎症性腸疾患潰瘍性大腸炎クローン病)、慢性膵炎(すいえん)などの消化器疾患や、てんかんなどがあります。

 非器質的疾患の代表的なものに、過敏性腸症(かびんせいちょうしょう)と心理的ストレスがあります。反復性腹痛は中学生の10~15%が経験するといわれています。

 その原因として非器質的疾患が最も多く、なかでも過敏性腸症の可能性が60%、原因不明が20%、ストレスに対する心因反応が10%で、器質的な病気がある場合(腹痛の原因がはっきりとする場合)はわずか10%にすぎません。

症状の現れ方

 症状(へそ)周囲を痛がることが多く、強さや持続時間は一定でないものの、腹痛は1時間以内に治まります。腹痛とともに、頭痛、顔色不良、嘔吐がみられることがありますが、普段は無症状です。症状は心理的なストレスが加わると悪化し、週末や休日になると軽快する傾向があります。また、就寝中には腹痛はみられません。

検査と診断

 診断は、腹痛に関しての詳しい情報、および病歴の聴き取りが中心となります。反復性腹痛の原因は前述のように、非器質的疾患、なかでも過敏性腸症が大半を占めるので、検査は家族、とくに母親と本人の安心感を得るために最小限にとどめます。

 器質的な病気が強く疑われる場合には、血液検査や便・尿検査腹部超音波検査、そして必要なら消化管内視鏡検査を行います。

治療の方法

 治療は原因によって異なります。器質的な病気の場合は原疾患に対する治療が優先されますが、非器質的疾患で過敏性腸症の場合は定期的に外来を受診し、患者(母親も含む)と医師の信頼関係を築くことに努めます。

 過敏性腸症は完全治癒が難しく再発することが多いため、ドクターショッピングをする頻度が高く、これを防ぐ必要があるからです。完治は難しいですが生命予後は良く、70%の軽快でよしとするように納得する必要があり、そのための信頼構築が必要です。最近は効果が期待できる薬が開発され、良い結果が出ています。

 心因性(ストレス性)に対しては、心理療法薬物療法を組み合わせて行います。

病気に気づいたらどうする

 腹痛発作の時は本当におなかが痛いことを理解し、持続する場合は外来を受診しましょう。しかし、両親が過度に心配をすると逆効果になることもあります。信頼できるかかりつけ医をもち、定期的に外来受診をしていきましょう。

 また、家庭内でのコミュニケーションを密にして、何らかの原因が隠れていないかを探すことも望まれます。

春名 英典

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「反復性腹痛」の解説

はんぷくせいふくつうはんぷくせいさいせんつう【反復性腹痛(反復性臍疝痛) Recurrent Abdominal Pain】

[どんな病気か]
 子どもは、しばしば、くり返す腹痛を訴えます。2歳以下の小さな子どもの場合、急性胃腸炎などのからだの病気が腹痛の原因として見つかることが多いのですが、幼稚園児、学童の場合は、からだの病気がないことが少なくありません。突然おなかの痛みが出現し、自然に治り、また出現することをくり返していても特別な基礎疾患がないものを反復性腹痛と呼びます。また、この腹痛はおへそ(臍(さい))の周辺に多いことから、反復性臍疝痛(はんぷくせいさいせんつう)とも呼ばれます。
[症状]
 腹痛の持続時間は、数分から数時間にわたることがあり、顔面蒼白(がんめんそうはく)、頭痛、吐(は)き気(け)をともなうこともあります。腹痛がないときは、元気で、腹痛を重ねるごとに症状が強くなりますが、病気が重くなるような印象はありません。夢中になって遊んでいるときは訴えが少なく、入眠後に腹痛で目が覚めることは、ふつうありません。また、週末や長い休みに入ると訴えが減る傾向がみられることもあります。
 神経質な子どもや神経質な家庭で育っている子どもにおこりやすく、ストレスが神経系にはたらきかけて腹痛を感じさせていると考えられます。
[治療]
 特別な治療は必要ではありませんが、ストレス、不安などのもとを取り除き、安定した、明るい生活をさせることが、治療になります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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