取上(読み)とりあげる

精選版 日本国語大辞典 「取上」の意味・読み・例文・類語

とり‐あ・げる【取上】

〘他ガ下一〙 とりあ・ぐ 〘他ガ下二〙
① 下にあるものを手に取って持つ。拾いあげる。
※万葉(8C後)一八・四一二九「針袋等利安宜(トリアゲ)前に置きかへさへばおのともおのや裏も継ぎたり」
② 財産などを没収する。また、法規に基づいたり、戦時の特別措置によったりして、金銭物資などを強制的に出させる。
日葡辞書(1603‐04)「ヤク、または、チギャウヲ toriaguru(トリアグル)
③ 取って自分のものにしてしまう。だましたり、腕にかけたりして奪い取る。ふんだくる。
滑稽本浮世床(1813‐23)二「紙入の類みな取(トリ)あげられて手になし」
④ 特に数えたてる。また、とりたてて問題にする。
※浮世草子・好色一代男(1682)一「取(トリ)あげて沙汰すべきやうなく」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「彼様な奴の云ふ事を取上げるも大人気ないと思って」
身分などを引き上げる。上位につける。
※浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)三「其身を過分に取あげし安祿山など」
⑥ 意見、申し出などを採用する。申し出たことを受理する。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙緒言将又(はたまた)効能をいふたればとて、座長もヲイソレとは取(トリ)あげざる也」
産婦を介抱して子を分娩させる。また、育てる。
曾我物語(南北朝頃)九「君をば乳のうちより、それがしこそ取あげ奉ては候へ」
⑧ 髪をたぐりあげて結ぶ。また、髪を結い上げる。
義経記(室町中か)五「かぶとをばぬいでたかひもにかけ、みだしたるかみとりあげ」
髪上げを行なう。元服させる。
平家(13C前)一〇「生年九と申し時、君の御元服候し夜、かしらをとりあげられまいらせて」

とり‐あげ【取上】

〘名〙
① 意見、申し出などを採用すること。
浄瑠璃嫗山姥(1712頃)二「お取上も無い時は、すごすごとは戻られまい」
② 他人のものを無理に奪い取ること。没収すること。
短歌への訣別(1946)〈臼井吉見〉「『若い精神とその洞察力を極度に恐れた』当局検閲、とり上げ、焼き棄てのほかに」
③ 産婦を介抱して子を分娩させること。また、それを業とする人。取り上げ婆。
※雑俳・柳多留‐四六(1808)「取揚の飾をくぐる御年づよ」
④ 農作物をとり入れること。収穫。
※良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉前「収穫(トリアゲ)でも済んで十一月とか十二月とか迄延ばせねエことも有るめエに」

とり‐のぼ・せる【取上】

[1] 〘自サ下一〙 とりのぼ・す 〘自サ下二〙 (「とり」は接頭語) 感情が高まり、分別を失う。逆上する。のぼせあがる。とりのぼる。
※雑俳・神酒の口(1775)「うれしがる・百両あたりとりのぼす」
[2] 〘他サ下一〙 とりのぼ・す 〘他サ下二〙 (「とり」は接頭語。多く「気をとりのぼす」の形で) のぼせあがらせる。
※談義本・銭湯新話(1754)一「清八は天にも上る心地して、滅多に調子高になり、気をとりのぼせて」

とり‐のぼ・る【取上】

〘自ラ四〙 (「とり」は接頭語)
① 高い所へあがる。
※太平記(14C後)九「番馬の宿の東なる小山の峯に取り上り」
※浄瑠璃・鎌倉袖日記(1688‐1704頃)二「情ほのめく目のうちに、清忠彌取のぼり、我はみだるるしのずすき」

とり‐あが・る【取上】

〘自ラ四〙
① (「とり」は接頭語) あがる。のぼる。
※太平記(14C後)一六「将軍は香椎宮に取挙(アカッ)て遙に菊池が勢を見給ふに」
② 相撲などで、下位の取組みから上位の取組みへあがる。上位に付く。
※咄本・無事志有意(1798)白眼競「扨だんだんに取あがり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android