短歌(読み)たんか

精選版 日本国語大辞典 「短歌」の意味・読み・例文・類語

たん‐か【短歌】

〘名〙
和歌一体長歌に対して、五七五七七の五句から成るもの。みそひともじ。みじかうた。
万葉(8C後)二〇・四四七一・題詞「冬十一月五日夜、小雷起鳴、雪落覆庭、忽懐感憐、聊作短歌一首」
② 主として中世歌学において長歌の誤称
俊頼髄脳(1115頃)「次に短歌といへるものあり。それは五文字・七文字とつづけて、わがいはまほしき事のある限りはいくらとも定めずいひつづけて、はてに七文字を例の歌のやうに二つつづくるなり」
③ みじかい詩。
空華集(1359‐68頃)六「詩帯岷峨気、学兼洙泗文、短歌蒙拊撃、蕪語辱鋤斤」 〔魏文帝‐燕歌行〕
[補注](②について) 「古今和歌集」の諸本で、巻第一九雑体の始めにある長歌に「短歌」と記されている。古今集を絶対視する考えから、これを正しいものとして、中世歌学では長歌を短歌、短歌を長歌と呼ぶ説が行なわれたもの。

みじか‐うた【短歌】

〘名〙 和歌の一体、短歌(たんか)をいう。また、主として、中世歌学において長歌(ちょうか)の誤称。
※俊頼髄脳(1115頃)「ことばのみじかき故に、みじか歌とはいふなり」

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デジタル大辞泉 「短歌」の意味・読み・例文・類語

たん‐か【短歌】

和歌の一体。五・七・五・七・七の5句31音からなる歌。発生については諸説あるが、万葉時代には成立し、平安時代以降、長歌・旋頭歌せどうかなどがほとんど作られなくなり、和歌といえば短歌をさすようになった。みそひともじ。みじかうた。→長歌
[類語]三十一文字長歌旋頭歌連歌狂歌

みじか‐うた【短歌】

たんか(短歌)」に同じ。⇔長歌ながうた

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百科事典マイペディア 「短歌」の意味・わかりやすい解説

短歌【たんか】

詩歌の一形態。5・7・5・7・7の5句31音からなり,〈三十一字〉〈三十一文字(みそひともじ)〉とも呼ばれた。長歌旋頭歌(せどうか)とともに古く,記紀歌謡にみられ,つづいて盛んな万葉時代を迎えた。以後,勅撰集などを中心として展開してきた貴族たちの歌壇,中世・近世武家の歌文の世界の中心的な詩型として,長い歴史と伝統を誇って現代に伝えられている。平安以後長歌や旋頭歌は衰え,漢詩に対する倭歌(やまとうた)を短歌が代表するようになり,和歌といえば短歌形式をさすようになったが,明治以後再び短歌という呼び方が一般的になった。1880年ころから西欧詩の影響末松謙澄らの和歌改良論が起こり,浅香(あさか)社や《心の花》などの新派和歌運動が堂上,桂園,江戸の各旧派を否定,1899年には根岸短歌会新詩社が成立し,前者は《アララギ》に継承され,後者は《明星》によって活躍した。これらの中から明治末の生活派短歌,大正中期以後の社会主義短歌や昭和のプロレタリア短歌も生まれ,自由律の運動も起こった。
→関連項目歌合大伴坂上郎女笠金村狂歌定型反歌貧窮問答歌連歌

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「短歌」の意味・わかりやすい解説

短歌
たんか

和歌の一形式。長歌の対。5・7・5・7・7の各音を有する5句で構成される。合計 31字であるので,「みそひともじ」ともいう。初句 (第1句) から第3句までを上 (かみ) の句または本 (もと) ,第4,5句を下 (しも) の句または末 (すえ) と呼ぶ。起源については,長歌の終りが独立したという見方,旋頭歌 (せどうか) の第3句が省略されて生れたという考え方,そのほかがある。長歌形式とともに,記紀歌謡にも多く見出される。『万葉集』の歌人では,山部赤人,大伴旅人などが短歌で本領を発揮した。柿本人麻呂によって長歌が完成の極に達し,以後衰微するのに対し,短歌は以後も変らず詠み続けられ,平安時代以後,和歌といえばほとんどの場合短歌を意味するようになった。また上の句と下の句とを2人で分けて詠むことから連歌が起った。これは平安時代には和歌の一形態と考えられていたが,中世に入ってジャンルとして独立した。近代短歌のなかには,31音の定型にこだわらない自由律短歌も試みられている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「短歌」の解説

短歌
たんか

和歌の歌体の一つ。長歌に対する語。形式は五七五七七音の5句体,三十一音になるところから,みそひと文字ともいう。5句をわけて,五七五の3句を上の句,七七の2句を下の句とよび,第1・3・5句をそれぞれ初句・腰句・結句などともいう。名称の初見は「万葉集」で,長歌に反歌のともなうことを「短歌を并せたり」と記すのは,反歌が短歌の形式によることを示す。短歌形式の成立については,旋頭歌(せどうか)の第3句が落ちたとする説,五七五七の4句体歌の末尾に1句が加わったとする説,長歌の終りの5句が反復されて,独立した反歌から派生したとする説などがある。平安時代以後,長歌・旋頭歌などほかの歌体が衰えるのにともない,和歌といえば短歌をさすようになった。短詩型としての固有の形態は,感動を凝縮して表現するのに適し,各時代の情趣や感覚を反映する融通性をも備えるなど,今日に至るまで長く文学史の主要なジャンルを占めている。

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普及版 字通 「短歌」の読み・字形・画数・意味

【短歌】たんか

短い詩。魏・文帝〔燕歌行〕楽府 短歌吟、長くすること能はず 皎皎(けうけう)として、我が牀を照らす

字通「短」の項目を見る

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世界大百科事典 第2版 「短歌」の意味・わかりやすい解説

たんか【短歌】

俳句とともに日本の伝統的詩歌を代表する5拍7拍5拍7拍7拍の,5句31拍からなる詩。7世紀に成立し,1300年を経た今日もなお多くの支持を得ているきわめて長命な詩である。連歌,俳句を生み出しただけではなく,仏教とも深くかかわりを持ち,さらに謡曲,歌舞伎などにも深い影響を及ぼした。その意味で,文学史の中だけではなく,文化史,芸能史などへも広く深く影響を及ぼした独自な歴史を持つ。
[呼称]
 〈短歌〉は,31拍からなるために俗に〈三十一文字(みそひともじ)〉とも称せられ,〈みじかうた〉と呼ばれることもあった。

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デジタル大辞泉プラス 「短歌」の解説

短歌

株式会社KADOKAWAが発行する趣味・専門誌。短歌に関する情報を紹介。毎月25日発売。

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世界大百科事典内の短歌の言及

【短歌】より

…その意味で,文学史の中だけではなく,文化史,芸能史などへも広く深く影響を及ぼした独自な歴史を持つ。
[呼称]
 〈短歌〉は,31拍からなるために俗に〈三十一文字(みそひともじ)〉とも称せられ,〈みじかうた〉と呼ばれることもあった。さらに〈敷島(しきしま)の道も盛りにおこりにおこりて〉(《千載集》序)とあるように〈敷島の道〉と呼ばれもした。…

※「短歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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