日本大百科全書(ニッポニカ) 「口腔清掃」の意味・わかりやすい解説
口腔清掃
こうくうせいそう
う蝕(しょく)(むし歯)および歯周疾患の予防と治療を目的として、歯の表面ならびに歯肉の辺縁部に堆積(たいせき)する歯垢(しこう)、歯石(しせき)、食物残渣(ざんさ)、色素性沈着物などを除去することをいう。口腔清掃の方法は、歯垢のように軟らかくて除去しやすいものを対象とした歯垢除去法(プラーク・コントロール法plaque controlともいう)と、歯の表面に強固に付着している歯石を対象とした歯石除去法とに分けられる。
プラーク・コントロール法には、機械的に除去する方法と生物化学的に歯垢の堆積を抑制する方法とがある。歯ブラシは、機械的な口腔清掃器具の代表的なもので、一般に市販されているものと、歯周疾患(歯肉炎、歯周炎)の治療用として、歯科医師または歯科衛生士の指導のもとに使用される治療歯ブラシとがある。また手用歯ブラシに対して、電気的な振動を利用した電動歯ブラシがある。歯ブラシは歯の頬側(きょうそく)面および舌側面には有効であるが、隣接面の歯垢除去効果は不十分である。隣接面の清掃は歯間ブラシおよびデンタル・フロス(ナイロン製の糸)を用いて行う。そのほか、ラバー・チップ、木製またはプラスチック製の楊枝(ようじ)、義歯用のブラシなどがあるが、これらの口腔清掃用器具の使用にあたっては、その人の口腔内の状態によって、もっとも適したものを選択する必要がある。今日では、一般的な歯ブラシと隣接面清掃器具の併用が有効であるとされている。
一方、薬剤の局所塗布または洗口によって、生物化学的に歯垢の堆積を予防したり、除去する方法がある。歯垢形成に関与している細菌の増殖を抑制したり、歯垢の構成成分を分解することを目的としているが、その効果は十分とはいえない。
歯石除去法とは、歯石除去器(スケーラーscaler)を用いて歯石を機械的に除去する方法で、スケーリングscalingともいわれる。スケーラーには手用スケーラーと超音波スケーラーとがある。
[加藤伊八]