う蝕(読み)うしょく(その他表記)dental caries

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「う蝕」の意味・わかりやすい解説

う蝕
うしょく
dental caries

一般には虫歯と呼ばれる。う蝕にかかった歯をう蝕歯またはう歯という。代表的な歯科疾患で,5~15歳の日本人の約 90%にすでに認められる。本態は細菌感染による歯の破壊と考えられる。エナメル質,特に歯の溝や隣接面,歯肉との境の部分は,形態上清掃が行届かず,歯苔が付着しやすい。歯苔の約 70%は口腔内に常在する微生物群で,特にミュータンスレンサ球菌は,食物糖分から酸を生成してエナメル質を溶かす。エナメル質が侵されると,微生物が深部に向って増殖し,進行しやすい。病変歯髄 (俗にいう神経) に及ぶと,充血歯髄炎による痛みが強くなる。化膿性歯髄炎では頭痛,不眠を伴う激痛となり,さらに進行すると,歯髄腔から根管,根尖孔を経て歯根周囲の歯根膜,歯槽骨を侵し,根尖性歯周炎となる。さらに顎骨骨髄炎や顎炎を起すこともある。このほか,う蝕が原因で起る合併症も多いので,予防と早期治療が重要となる。糖質の多い食生活がう蝕の発生につながることは明白で,ことに,歯面に長くとどまりやすい粘着性の糖質食品は,う蝕の発生を助長する。予防法としては,歯苔を除くための口腔清掃,エナメル質を耐酸性にするフッ化物飲用あるいは塗布などがある。う蝕の一般的な治療法は,病変部を含めて適当な形に象牙質を削り取り,十分消毒したのち,充填物 (インレー) を詰める。歯髄が回復不能なほど侵されていれば,抜髄して根管治療根管充填を行い,補綴物で修復する。

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