歯および義歯などの表面に堆積(たいせき)する硬い物質をいう。歯石は血清または唾液(だえき)中の無機塩類が沈着して、歯垢(しこう)が石灰化することによって形成される。形成初期の歯石は軟らかいが、古くなると無機質の含有量を増して硬くなる。歯石は歯垢と並んで歯肉炎または歯周炎の有力な原因である。歯石中の無機質はリン酸カルシウム75.97%、炭酸カルシウム3.17%、リン酸マグネシウム3.77%であり、有機質はタンパク質8.34%、脂肪2.71%、水分その他6.04%となっている。歯石は堆積する場所によって歯肉縁上歯石と歯肉縁下歯石とに分けられるが、化学的組成はほぼ同じである。歯肉縁上歯石は、歯肉の辺縁より上部(歯冠部)に堆積する帯黄白色の歯石で、直接観察することができる。歯肉縁下歯石は、歯周炎によって歯肉が歯の表面から剥離(はくり)したために形成される「すきま」(歯周ポケット)の歯根表面に堆積する黒褐白の歯石で、歯肉縁上歯石より硬く、また強固に付着している。
[加藤伊八]
歯垢が長期間のうちに石灰化したもの。下顎の前歯の内側,上顎の臼歯の外側に沈着しやすい。口腔に露出している歯面に付着している歯石は,淡黄色ないし黄褐色を呈していることが多いが,まれに黒緑色ないし黒色を呈する歯石が付着していることがある。このような黒い歯石は〈血石〉ともいわれ,歯肉に炎症のある場所の歯根面に付着していることが多く,出血した血液や滲出液と関連があると考えられている。歯石は,歯肉との境界部の歯面に付着することが多く,長い年月の間には歯肉辺縁を覆うまでに増大することもある。歯石の表面には歯垢が付着しやすく不潔になりやすい。また,歯肉辺縁部に機械的な刺激を与えることもあって,歯周疾患の原因の一つに数えられている。歯石は,歯科医師または歯科衛生士によって,歯石除去器を用いて除去しないと取り除くことができない。歯周疾患の予防のためには,歯石を定期的に除去することがたいせつである。
執筆者:岡田 昭五郎
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…歯垢のもとは,口の中に常在するある種の細菌が活発に代謝する結果つくられるので,菌の栄養源となる砂糖の摂取を控え,また節度のあるとり方が必要である。(3)歯垢や歯石をこまめに除く。歯石は歯垢に石灰塩が沈着してできる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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