日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉野汁」の意味・わかりやすい解説
吉野汁
よしのじる
澄まし汁に葛粉(くずこ)を溶いて流し込み、とろみをつけた汁。口あたりがよく冷めにくい汁である。葛の主産地が奈良県吉野であるところからこの名がある。現在では葛粉でなく、かたくり粉を用いているが吉野汁という。種(たね)には、タイ、ヒラメ、ハモ、シラウオ、貝類、エビ、鶏肉、野菜類のいも、蓮根(れんこん)、タケノコ、シイタケなど、淡味のものが適する。味つけは澄まし汁とほぼ同じでよいが、冷やして用いるときには少々濃い味つけにしたほうがよい。葛粉は、だし汁4カップに対して大さじ1ぐらいの割合でよい。これを2~3倍の水で溶き、汁の実が煮えてからすこしずつ加えてかき混ぜる。かきたま汁の場合には、沸騰しただし汁に水溶き葛粉をゆっくり加えてから、溶き卵を急須(きゅうす)または紙を巻いて先細にしたものの中に入れ、鍋(なべ)の汁の中に円を描きながらゆっくり流し込み、すぐに箸(はし)でかき混ぜる。卵1個にだし汁4~5カップの割でもよく、刻みネギなどを加えてもよい。
[多田鉄之助]