同名惣(読み)どうみょうそう

改訂新版 世界大百科事典 「同名惣」の意味・わかりやすい解説

同名惣 (どうみょうそう)

中世後期にあらわれる同姓武士団の団結組織。日本の武士団には,惣領(そうりよう)による支配の強い強大な武士団と,それの薄弱な武士団とがあり,後者は多くとして結合したが,さらに弱小な武士団のなかには,同姓者が集まってをつくるものがあり,これを同名惣または同名中惣と呼ぶ。同族以外に被官(ひかん)で主家から姓を許されたものを含み,ときには姻戚らしい異姓者をも含むこともある。典型的なものは近江国甲賀郡の甲賀郡中惣を構成していた武士団で,対外的には同名惣を代表し,対内的には庶務を執行する奉行・年行事を互選によって選出した。また規約を定めてその団結強化と統制をはかり,戦時には一致した行動をとり,平時には農民支配の貫徹を期した。しかし織田・豊臣氏による統一政権の成立とともに解体崩壊した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の同名惣の言及

【甲賀郡中惣】より

…郡内には甲賀53家と総称される地侍土豪が群居した。彼らは同名惣と称する同姓集団を基礎に団結していたが,それが小地域的に連合して伴,山中,美濃部3氏による柏木三方惣のような小地域連合をもち,さらにそれを1郡規模に拡大したのが甲賀郡中惣である。その存在が史料的に確認できるのは山中文書の1571年(元亀2)の〈郡中惣意見条々案〉をさかのぼらないが,隣接する伊賀惣国一揆と密接に連携していたことから類推すれば,1562年(永禄5)以前にすでに確立していたと考えねばならない。…

※「同名惣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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