呼吸器系疾患(読み)こきゅうきけいしっかん(英語表記)disease of respiratory organs

知恵蔵 「呼吸器系疾患」の解説

呼吸器系疾患

気管気管支、肺などの呼吸器系の病気。空気中に硫黄酸化物、窒素酸化物、浮遊粒子状物質などの有害物質が含まれていると、鼻、のど、気管、気管支などの呼吸器上部に作用し、一部は肺の奥まで入り込む。気管や気管支の内面粘膜絨毛(じゅうもう)になっており、有害物質が入り込むと激しく動き、咳(せき)や痰(たん)となって体外に排出する。だが、多量の有害物質が入り込むと、ぜんそく、気管支ぜんそく、肺気腫といった呼吸器系疾患に侵される。四日市(三重)ぜんそくに始まり、西淀川(大阪)、尼崎(兵庫)、川崎(神奈川)、千葉(千葉)、倉敷(岡山)、名古屋南部(愛知)、北九州(福岡)、東京などの大気汚染地域では、10万人以上の呼吸器系疾患が発生し、1968年に第3の公害病に認定された。「公害健康被害補償法」で医療費や生活費を補償されていたが、1988年の大気汚染公害指定地域の解除により、新規患者が認定されなくなった。東京、大阪、名古屋などの大都市部では、公害患者は現在でも発生しており、東京では救済を求める公害訴訟が起こされ、ぜんそく患者らに対する医療費助成制度を創設することで、和解が2007年8月に成立した。

(畑明郎 大阪市立大学大学院経営学研究科教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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