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公害訴訟 こうがいそしょう

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大辞林 第三版の解説

こうがいそしょう【公害訴訟】

公害に関して損害賠償や差し止めを求めてなされる訴訟。熊本水俣病訴訟・新潟水俣病訴訟・富山イタイイタイ病訴訟・四日市喘息訴訟は四大公害訴訟といわれる。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

公害訴訟
こうがいそしょう

公害によって健康被害生活環境に係る被害が生じた場合に、損害賠償や公害を引き起こす行為の停止(差止め)を求める訴訟。環境訴訟ということば環境破壊や環境の悪化を防止することを目的とする訴訟をさすことが多いのに対して、公害訴訟ということばは、現実に公害被害が生じている場合にそれに対する損害賠償や差止めを求める訴訟をさすことが多いが、厳密な区別ではない。[淡路剛久]

四大公害訴訟

公害訴訟としてまず有名なのは四大公害訴訟であるが、これはイタイイタイ病訴訟(一審・富山地方裁判所昭和46年6月30日判決、二審・名古屋高等裁判所金沢支部昭和47年8月9日判決)、新潟水俣(みなまた)病訴訟(新潟地方裁判所昭和46年9月29日判決)、四日市公害訴訟(津地方裁判所四日市支部昭和47年7月24日判決)、および熊本水俣病訴訟(熊本地方裁判所昭和48年3月20日判決)の四つの大きな公害訴訟の総称である。このほか大阪国際空港公害訴訟(一審・大阪地方裁判所昭和49年2月27日判決、二審・大阪高等裁判所昭和50年11月27日判決、上告審・最高裁判所大法廷昭和56年12月16日判決)を加えて、五大公害訴訟とよぶこともある。
 これらのうちで、まずイタイイタイ病訴訟は、金属鉱山(三井金属鉱業)の廃水に含まれていたカドミウムによりイタイイタイ病(カドミウムを吸収した骨はもろくなり、ぽきぽき折れて被害者がイタイイタイと泣き叫ぶことからこのような名前がつけられた)に罹患(りかん)した被害者ないしその相続人が、原因者である企業に鉱業法第109条に基づいて無過失損害賠償責任を求めたものである。一審判決は、疫学に基づく因果関係の立証を裁判上の因果関係(法的因果関係)の立証手段として採用し、被告企業からの廃水とイタイイタイ病の発生との間の因果関係を肯定して企業の損害賠償責任を認めた。二審判決も企業の責任を肯定した(二審判決が確定)。
 新潟水俣病訴訟は、熊本水俣病に次ぐ第二の水俣病事件に関する訴訟であって、化学企業(昭和電工鹿瀬(かのせ)工場)の工場廃水に含まれていた有機水銀(塩化メチル水銀)により水俣病に罹患した被害者が原因企業に対して民法第709条に基づき損害賠償を求めたものである。判決は、因果関係の立証責任の一部を被告企業側に転換して因果関係を肯定し、過失に関しては、化学企業には、最高の分析検知の技術を用いて廃水中の有害物質の有無を調査検討し、人の生命、身体に危害が及ぶおそれがあるような場合には操業の短縮や停止をするなどの義務があるのにこれを怠ったとして、過失を認定し、結局企業の損害賠償責任を肯定した(一審で確定)。
 さらに、四日市公害訴訟は、四日市市の磯津(いそづ)地区に住み、ぜん息などの大気汚染系の疾病に罹患した被害者が、四日市の第一コンビナートを形成する化学企業、火力発電所など6社を相手に、民法第709条と共同不法行為に関する同法第719条に基づいて損害賠償を求めたものである。判決は、疫学的立証によって因果関係を肯定し、過失については、被告6社の立地上の過失と操業上の過失を認定し、また、共同不法行為については、社会通念上全体として一個の行為と認められる程度の一体性がある場合(「弱い関連共同性」のある場合)には各人の行為(各工場からのばい煙の排出)と損害の発生との間の因果関係が推定され、さらにこのような関連共同性を超えてより緊密な一体性が認められるとき(「強い関連共同性」のあるとき)には、たとえ当該工場のばい煙が少量でそれ自体としては結果の発生との間に因果関係がないと認められる場合でも責任を免れないとして、結局被告企業6社全部について損害賠償責任を認めた(一審で確定)。
 最後に、熊本水俣病訴訟は、化学工場(チッソ)の廃水に含まれていた有機水銀(塩化メチル水銀)により水俣病に罹患した被害者が原因企業に対して民法第709条に基づき損害賠償を求めたものである。因果関係はほとんど争いがなかったことから、判決はこれを簡単に肯定し、過失については、化学工場が廃水を工場外に放流するにあたってはつねに最高の知識と技術を用いて廃水中の危険物質混入の有無、動植物や人体への影響のいかんにつき調査研究し、万一有害であることが判明したり、疑念が生じた場合には、操業を中止するなどの義務があるのに、これらを怠ったとして過失を肯定し、企業の損害賠償責任を認めた(一審で確定)。[淡路剛久]

騒音公害訴訟

四大公害訴訟ののち大規模な公害訴訟でまず判決を迎えたのは、大阪国際空港公害訴訟であった。第一審判決は、夜9時以降翌朝7時までの夜間飛行の禁止請求(差止請求)に対して、夜10時以降の差止めのみを認め、損害賠償請求については過去の損害賠償のみを認めた。これに対して、二審判決は、夜9時以降の夜間飛行の差止めを命じ、また損害賠償についても過去と将来の損害賠償を認めて、画期的と評された。しかし、最高裁判所は、差止請求については民事訴訟としては不適法であるとして却下し、将来の損害賠償も却下し、過去の損害賠償のみ原則的に二審判決を維持した。さらに、名古屋の東海道新幹線公害訴訟(一審・名古屋地方裁判所昭和55年9月11日判決、二審・名古屋高等裁判所昭和60年4月12日判決)が大型の公害訴訟として判決を迎えたが、一審、二審判決とも差止請求(騒音の減少ないしスピードダウン)を棄却し、損害賠償のみ肯定している。[淡路剛久]

大気汚染公害訴訟

ついで、四大公害訴訟を継承した本格的な公害訴訟として、一方で、大型の大気汚染公害訴訟がある(千葉川鉄、西淀川、倉敷、川崎、尼崎、名古屋南部の各大気汚染公害訴訟)。これらの訴訟はすべて2001年までに和解合意した。その内容はすべての訴訟について、基本的に被告企業の責任が認められ、企業は解決金を支払い、国は大気汚染対策の実施を約束するというものである。道路公害については、西淀川訴訟、川崎訴訟において、国、公団の責任が認められた後、国、公団が道路対策をとることなどを内容とする和解が成立した。また尼崎訴訟では、国と道路公団に対して、一定基準を超える粒子状物質を排出させないように命じる、差止判決が初めて認められた(神戸地方裁判所平成12年1月31日判決)。[淡路剛久]

その後の水俣病問題

他方、患者の発生から40年を経てなお続いた水俣病事件は、熊本二次訴訟では水俣病の認定をめぐって争われ(いわゆる未認定患者問題)、熊本三次訴訟以降、各地の水俣病訴訟(東京訴訟、京都訴訟、関西訴訟)および新潟二次訴訟においては、行政(国および自治体)の国家賠償法1条の責任および水俣病の認定の問題をめぐって争われた。そして、未認定患者の救済問題については、行政認定を批判して、認定の基準が狭きに失するとし(熊本二次訴訟に関する福岡高等裁判所昭和60年8月16日判決、三次一陣訴訟に関する熊本地方裁判所昭和62年3月30日判決)、さらに感覚障害だけの水俣病を認めたものがあった(熊本三次一陣判決、新潟二次訴訟に関する平成4年3月31日判決)が、反対の判決もあり(水俣病東京訴訟に関する東京地方裁判所平成4年2月7日判決、水俣病関西訴訟に関する大阪地方裁判所平成6年7月11日判決)、決着がつかないまま和解に至った。国の責任については、国の責任を肯定する判決と、新潟水俣病判決(二次訴訟判決)を含めて国の責任を否定する判決とに分かれた後、関西訴訟の二審裁判を除いて、和解に終わった。[淡路剛久]
『淡路剛久、寺西俊一編『公害環境法理論の新たな展開』(1997・日本評論社) ▽水俣病被害者・弁護団全国連絡会議編『水俣病裁判全史』第1巻総論編、第2巻責任編(1998、99・日本評論社) ▽環境弁護士グループ「ちきゅう」著『環境と法律――地球を守ろう』(1999・一橋出版) ▽森田雅之著『環境訴訟の視点』(1999・法律文化社)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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