改訂新版 世界大百科事典 「和刻三言」の意味・わかりやすい解説
和刻三言 (わこくさんげん)
江戸中期の儒者岡白駒(はつく)とその門人沢田一斎が,中国の白話短編小説に訓点・傍訓を施して刊行した三つの書物。白駒による《小説精言》(4巻4冊。1743)は明末の《醒世恒言》から4話を,《小説奇言》(5巻5冊。1753)は《今古奇観》などから5話を,一斎による《小説粋言》(5巻5冊。1758)も《今古奇観》《警世通言》などからの5話をおのおの収載。沢田一斎(1701-82)は京都の書肆(しよし)風月堂の主人で,儒を学んだほか日本の古典にも通じ,交友も広かった。この三言の書はいずれも風月堂の刊である。なお,本来〈三言〉とは前記の《醒世恒言》など中国明末の三つの小説集をいう(三言二拍)。
執筆者:山田 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報