四極子モーメント(読み)シキョクシモーメント

化学辞典 第2版 「四極子モーメント」の解説

四極子モーメント
シキョクシモーメント
quadrupole moment

それぞれ ei なる大きさの電荷が隣接して各 ri(xiyizi)の位置に分布しており,これに電場ポテンシャル ψ が作用するとき,相互作用エネルギーは,

と表される.


は,この電荷分布の全電荷と双極子モーメントであるが,Θαβ は,

なる対称テンソルで,これを(電気)四極子モーメントという.電荷が連続的分布を示す原子核分子においては,を積分記号

∫ρdτ
で置き換える.また,磁場を考える場合にも,相互作用のエネルギーは磁気量について上と同じ形式となり,Θにあたる量を磁気四極子モーメントとよぶ.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「四極子モーメント」の意味・わかりやすい解説

四極子モーメント
よんきょくしもーめんと
quadrupole moment

大きさの等しい二つの双極子が反対向きに接近して並んでいるような電荷の分布を、極が四つあることから四極子という。もっと一般に、有限の広がりをもった電荷分布が、これと同等の場をつくるときにも拡張して四極子とよぶ。このような電荷分布を定量的に表現するには、テンソル形式を使う必要がある。このテンソルのことを四極子モーメントとよび、しばしばQijと書く。直観的には、四極子は電荷分布の球対称からのずれを表すと思ってよい。四極子は、空間的に一様でない電場と相互作用する。この相互作用を四極子相互作用とよぶ。実験的には、四極子相互作用の大きさを測定することによって、四極子モーメントを知ることができる。

電荷分布が時間的に変動している場合には、四極子モーメントは時間の関数になる。運動している電荷の加速度の時間微分がゼロでない場合には、四極子は{d3Qij/dt32に比例した強さの電磁波放射する。この放射を四極放射quadrupole radiationとよぶ。

[安岡弘志]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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