日本大百科全書(ニッポニカ) 「四極子モーメント」の意味・わかりやすい解説
四極子モーメント
よんきょくしもーめんと
quadrupole moment
大きさの等しい二つの双極子が反対向きに接近して並んでいるような電荷の分布を、極が四つあることから四極子という。もっと一般に、有限の広がりをもった電荷分布が、これと同等の場をつくるときにも拡張して四極子とよぶ。このような電荷分布を定量的に表現するには、テンソル形式を使う必要がある。このテンソルのことを四極子モーメントとよび、しばしばQijと書く。直観的には、四極子は電荷分布の球対称からのずれを表すと思ってよい。四極子は、空間的に一様でない電場と相互作用する。この相互作用を四極子相互作用とよぶ。実験的には、四極子相互作用の大きさを測定することによって、四極子モーメントを知ることができる。
電荷分布が時間的に変動している場合には、四極子モーメントは時間の関数になる。運動している電荷の加速度の時間微分がゼロでない場合には、四極子は{d3Qij/dt3}2に比例した強さの電磁波を放射する。この放射を四極放射quadrupole radiationとよぶ。
[安岡弘志]