日本大百科全書(ニッポニカ)「発電機」の解説
発電機
はつでんき
generator
運動エネルギー(回転運動)を電気エネルギーに変換するエネルギー変換機器の総称。回転電気機器は電動機動作と発電機動作が可能であるが、とくに発電を目的として設計されたものを発電機とよんでいる。直流発電機、同期発電機、誘導発電機などの形式がある。
[森本雅之]
初期の発電機
発電機はM・ファラデーの電磁誘導の発見に続き、電動機と同時期につくられている。初期のものは永久磁石の回転を利用していた。1832年にピクシーHippolyte Pixii(1808―1835)が回転する永久磁石をコイルの近くを通過させて、「波打った電気」を製造することに成功した。これが現在の交流発電機の原型である。その後、1869年のZ・T・グラムは電気ブラシとコイルを使った直流発電機を発明した。その後、1881年にはE・W・ジーメンスが実用的な交流発電機を製造した。またこのころは送電を直流にすべきか、交流にすべきかの議論もあり、エジソンダイナモなどの直流発電機も種々開発された。
[森本雅之]
原理
磁界中に直線導体を置き、導体を磁界と直角の方向に運動させると、導体にはE=Blv(単位はボルトV)で表される起電力を生ずる。ここにBは磁界の磁束密度(テスラ)、lは磁界中にある導体の長さ(メートル)、vは導体の速度(メートル毎秒)である。起電力の向きはフレミングの右手の法則によって示される。
磁界に対する導体の運動は相対的であればよく、導体を静止させたままとし、磁界を上方へ速度vで動かしても導体に生ずる起電力の大きさと向きは、導体を下方に速度vで運動させた場合と同じになる。実際の発電機では、磁極か導体のいずれかを回転させて相対運動をさせる。
[磯部直吉・森本雅之]
発電機の種類
発電機は原理的には電動機と同一の構造である。したがって発電機も電動機と同様に、端子電圧の形態(直流電力を発電するか交流電力か)および回転速度と発電電力の周波数が比例する(同期する)かにより分類される。したがって直流機、誘導機などの電動機と発電機をあわせた呼び方で以下に示すような分類が行われる。
〔1〕直流機
(1)自励 直巻(ちょくまき)直流機、分巻(ぶんまき)直流機、複巻直流機。
(2)他励 他励直流機、永久磁石直流機。
〔2〕交流機
(1)同期機 巻線形同期機、永久磁石同期機、リラクタンス機(リラクタンスモーター)。
(2)誘導機(非同期機) かご形誘導機、巻線形誘導機、単相誘導機。
(3)交流整流子機(ユニバーサルモーター)。
一方、発電機は原理的な分類のほかに、駆動する原動機によっても分類される。
(1)タービン発電機 ガスタービン、蒸気タービンで駆動される高速の発電機。
(2)水車発電機 水車で駆動される低速の発電機。
(3)エンジン発電機 ディーゼルエンジンや各種のエンジンを原動機にもつ同期発電機。
(4)風力発電機 風車で駆動される超低速の発電機。
(5)その他の発電機 マグネト発電機、オルタネータ、エジソンダイナモ、電動発電機。
[森本雅之]
『電気学会編・刊『電気工学ハンドブック』第7版(2013)』