ガソリンといった燃料は使わず、電池にためた電気でモーターを回して走る車。走行中に温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を排出しない。1回の充電で走行できる距離が短いことや、車体価格が高く、充電設備の普及が進んでいないことが課題だ。自動車各社は電池の技術開発に力を入れている。中国では政府がEVの普及を強く後押しし、電池に強みがある比亜迪(BYD)などが台頭している。(共同)
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エンジンを使わず、外部から車載電池に充電し、モーターを回して走る車。走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しない。ドイツ自動車大手のメルセデス・ベンツグループが2030年までにEV専業への転換を計画するなど、次世代の環境車として有力視されている。ガソリン車に比べ価格が高く、走行可能距離が短いことや、充電ステーションの整備が課題となっている。
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原動機として電動機を利用した自動車。歴史はガソリン自動車よりも古く,1873年にイギリスのR.デビッドソンによって製作された四輪トラックが最初といわれる。ガソリン自動車の普及に伴い衰退したが,1960年代に入って,内燃機関がもたらす排気ガスや騒音などの公害問題がクローズアップされたこと,さらに73年の第1次オイルショックを契機として,さまざまなエネルギーの利用が可能な電気自動車が注目され,半導体技術や電子技術の急激な発達を背景として研究開発,試作が行われるようになった。
電動機は内燃機関と比較して小型で構造も簡単であり,ピストンのような往復運動部分がないため回転も円滑で,静粛な運転が可能である。出力の調整は,ガソリン自動車がスロットルバルブの開閉によってシリンダーに送る混合気量を加減して行っているのに対し,電気自動車では蓄電池からの電力を制御して電動機に加えることによって行う。駆動系を除いた他の基本的な構造は一般の内燃機関自動車と同様な構成をとるものが多い。
電気自動車は,動力源となる蓄電池によって走行性能が決定される。電気自動車用蓄電池に要求される性能は,(1)エネルギー密度(単位重量当りのエネルギー量)が高い,すなわち1充電当りの走行距離が長いこと,(2)出力密度(単位重量当りの出力)が高い,すなわち大きな電力を瞬時にとりだせ加速性能がよいこと,(3)充放電の繰返しサイクル寿命の長いこと,(4)保守取扱いが容易なこと,(5)信頼性,安全性が高く無公害であること,(6)低コストであることなどがあげられる。現在,電気自動車用として種々の蓄電池が研究開発されているが,主流を占めるのは鉛蓄電池である。鉛蓄電池は極板に比重の大きい鉛化合物を用いているので重量の点で不利な面が多く,そのため極板を多孔質にしたり,高分子材料と積層にするなどして軽量化をはかると同時に,出力効率の向上,容積効率の向上が進められている。このほか,極板に鉛化合物を用いず,銀,カドミウム,ニッケル,亜鉛などを組み合わせ,水酸化カリウムなどを電解液に用いるアルカリ電池や,その他の物質の電気的化学的な組合せからなる新型電池が研究開発されている。また,2種類以上の,特性の異なる電池を組み合わせて適宜使いわけ,発進加速性能および1充電当りの走行距離の向上をはかる試みもなされており,これはハイブリッド電池システムと呼ばれる。
これまでに開発された電気自動車のうちの9割以上は直流電動機を使用しており,そのうち直流直巻電動機を採用するものが半数以上を占めている。次いで多く採用されているのが直流分巻電動機である。直流直巻電動機は速度制御が比較的容易で,始動トルクが大きいため発進性能や加速性能に優れた特性が得られるが,反面,上り坂などでは走行速度が低下する欠点がある。直流分巻電動機は,負荷が増加しても回転数の減少は少なく,上り坂などでも一定速度で走行でき,また下り坂などでは発電機として働かせて電力を蓄電池に戻す,いわゆる回生制御が容易である特徴をもつが,始動トルクは直巻電動機に比較して小さい。最近では交流電動機の採用実績も増加している。
電気自動車は,制御システムによって電源電圧が制御され,走行速度が調整される。制御システムは,電気自動車の用途や要求性能および用いる電動機の種類,特性,性能に合わせ最適のシステムが採用される。直流電動機の場合には,抵抗制御方式,電圧切替制御方式,チョッパー制御方式の三つが,単独あるいは適宜組み合わされて用いられる。抵抗制御方式は,蓄電池と電動機の間に直列に数個の抵抗器を入れ,スイッチで切り替えて電圧を変化させ速度制御する方式,電圧切替方式は,数個の蓄電池の接続方法を並列や直列接続に切り替えて電源電圧を変化させる方式である。この両者は,ともに構成が簡単であるが速度制御が段階的になるため,構内車両やゴルフカートなどの比較的低速の車両に採用されている。チョッパー制御方式は半導体素子を用いて,電動機に加える電源の断続を速い周期で繰り返しながら時間比を変化させ,電圧や電力の平均値を変えて電動機の回転数を制御する方式である。この方式は保守性や信頼性が高く,なめらかな運転ができ,効率もよいため採用例が増えている。交流電動機の場合には,蓄電池の直流を周波数変換機(インバーター)を用いて交流にして,その周波数を変化させて速度制御を行う。このほか,単一種の電動機のみを用いるのでなく,特性の異なる電動機を併用するシステムや,内燃機関と組み合わせるなど他の原動機と併用するシステムも研究,実用化されており,これらはハイブリッド駆動システムと呼ばれる。
現在電気自動車は,排気ガスや騒音をきらう構内車,早朝の牛乳配達車,運搬車,シティカーなどに内燃機関自動車と補完し合う形で使われている。
→自動車
執筆者:中谷 弘能
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
外部電源から車載のバッテリーに充電した電気を用い、電動モーターを動力源として走行する自動車。英語の頭文字を用いてEVと表記されることが多い。
ガソリンや軽油などの化石燃料を使わないことから、地球温暖化の元凶とされる二酸化炭素(CO2)や、人体に有害な窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、ディーゼル排気微粒子(DEP)などの物質を排出しない自動車(ZEV(ゼブ):Zero Emission Vehicle。ゼロ・エミッション車ともいう)として普及が望まれている。また、枯渇が心配されている石油資源に頼らない自動車としても期待されている。
電気自動車の販売はすでに始まっているが、現在のところ、一回の充電で連続走行が可能な距離を伸ばすことと、充電インフラ整備の拡充が課題となっている。
そこで一回の充電での連続走行を伸ばす高性能バッテリーの開発が急がれているが、一方で、排ガスが出ないという利点から、都市部での短距離移動に電気自動車を限定的に用いるという考え方もある。インフラ整備の面では、駐車場に設置した太陽光発電装置との連携も始められている。
電気自動車は化石燃料を使う従来の自動車に比べて部品点数が大幅に少なく、バッテリー、モーター、インバーター(制御系)など、3種の重要構成部品はすべて外部の専門会社から調達が可能である。また、構造が簡単であることから低いコストでの生産が可能であり、工業技術が未熟で、自動車生産の経験がない新興工業国にも新規参入の機会がある。また、ベンチャー企業からの新規参入も始まっているなど、電気自動車の普及によって自動車産業自体にも変化が訪れることが予想されている。
歴史的には、電気自動車は19世紀後半にガソリン車が発明される以前から実用化されており、ガソリン車の普及が始まってからも、騒音が少なく取扱いが楽であることから市街地の移動手段として使われていたが、ガソリン車の台頭等により衰退したという経緯がある。
[伊東和彦]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…加えて馬車業界との利害の対立を生み,政治的問題へと発展,65年には自動車の交通規制を目的とした赤旗法が制定され,96年に同法が廃止されるまでイギリスにおける自動車の発達は止まり,その中心はフランス,ドイツ,アメリカなどに移っていった。 蒸気自動車とともに初期には電気自動車も盛んに用いられた。その歴史は必ずしも明確ではないが,1873年イギリスのR.デービッドソンによる四輪トラックが最初といわれており,80年代にはフランスで本格的な電気自動車が製作されている。…
※「電気自動車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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