改訂新版 世界大百科事典 「図書文引」の意味・わかりやすい解説
図書・文引 (としょぶんいん)
15世紀以降,日朝通交貿易者の統制上,発給された印(図書)および渡航証(文引)。図書とは,朝鮮国王が発給する銅製の私印のことで,1418年(応永25)に初めて造られた。授けられる日本人(受図書人)の実名が刻まれ,これを文書(書契(しよけい))に押して使者の渡航証とした。授与に先立ち,あらかじめ印形を紙にとどめ,所轄官庁と浦所に保管して,真偽の基準とした。文引は,従来貿易船に必要とされていた渡航証(行状(こうじよう))の携行を使船にまで適用したもので,路引(ろいん),吹噓(すいこ)とも称する。対馬島主宗氏が朝鮮側の了解のもとで発行権を握り,1436年(永享8)以降制度として定着した。当初は,対馬島内の渡航者を対象としていたが,やがて島外にも適用され,受図書人も特殊な者を除いて文引帯行を義務づけられる。発行の際,宗氏は手数料を徴収し,貿易品の課税を行った。日朝間の通交統制策のなかで,とくに宗氏の独占体制を可能にした制度である。
→日朝貿易
執筆者:田代 和生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報