デジタル大辞泉
「了解」の意味・読み・例文・類語
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りょう‐かいレウ‥【了解】
- 〘 名詞 〙
- ① はっきりとよくわかること。よく理解すること。また、理解して承認すること。諒解。領会。
- [初出の実例]「成書に就てこれを読むの間、回復玩味すれば、自ら了解することなり」(出典:蘭学階梯(1783)下)
- ② ( [ドイツ語] Verstehen の訳語 ) ディルタイの哲学で、文化を生の表現とみなし、その内的な生と文化との構造連関を、自己の体験、自己移入、追体験などによってとらえようとするプロセス・操作。理解。
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了解 (りょうかい)
Verstehen[ドイツ]
〈理解〉という訳語もある。〈人を理解する〉〈人の言うことがわかる〉という意味での了解は,ドイツ語ではごく日常的な動詞である。日本語で〈了解〉というときには単なる〈理解〉よりも相手への同意や賛意を表すことが多いかと思うが,その場合には,Einverständnis,Verständigungが用いられる。もっともVerständigungにはコミュニケーションとしての意志疎通の意も強い。19世紀初頭以来のドイツにおける(古典)文献学の中で,またそれをモデルにして発展してきた精神科学一般の自己反省や意義づけをめぐる議論の中で,こうした諸概念が単なる文献の意味了解を越えて,歴史や文化的所産に向かう人間の基本的なあり方を表すものとして(特に自然に関する〈説明〉と対照させて)哲学的概念に高められてきた。ディルタイは,人間の心的体験がなんらかの表現をみたものとして文化的所産をとらえ,それをわれわれが理解ないし了解(ともにVerstehen)しうると考えたが,そのモデルは個人が自己の歴史を振り返って一つの統一的な意味を作り上げるいわゆる〈自己了解〉である。したがってそこでは事柄や意味に関する了解と,心情もしくは魂の理解とがいささか混同されていた。いずれにせよ了解の基盤は,個別的に実現しているわれわれの生の普遍性である。ハイデッガーはこの了解概念をさらに拡大・形式化し,これを気分とともに世界にかかわる現存在のあり方,その自己遂行の基本的様態としてとらえた。そうしたものとしての了解は,例えば道具の意味の了解,つまりその使用能力をも意味するものとして,“実践的な”性格をもつ。その点は歴史に関しても同じで,歴史への了解的態度は,現在における世界定位という実践的性格をもつ。この考え方をさらに発展させたのがガダマーの解釈学的反省である。
これと別にM.ウェーバーは,人間の行為の〈主観的意味〉の了解をめざす了(理)解社会学verstehende Soziologieを構想している。主観的意味とは,心理的な感情ではなく,例えば営利企業における収益性の追求などがそれであり,したがって,それぞれの当事者の心理とは無関係のものである。伝統的行動様式を支える共通の了解なども主観的意味に含まれる。それらの理念型として目的合理性が考えられていることはいうまでもない。これらの諸概念によって彼は社会的行為における意味と歴史の客観的経過とを関連づけようとしたのである。また同意や意志疎通としての了解にとっては合意(コンセンサス)の成立が重要となるが,ウェーバーを部分的に発展させつつハーバーマスは,現代社会における了解と合意についての理論を追究している。なお,ディルタイ的な了解概念は心理学においても受けつがれており,了解心理学と呼ばれる。
執筆者:三島 憲一
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了解【りょうかい】
主としてドイツ語Verstehenの訳で,〈理解〉とも。対象をもっぱら外側から〈説明〉する自然科学的方法に対して,人間の体験,歴史,文化的所産などに向かう際に要請される態度。ディルタイの精神科学を支える概念で,心理学にも適用された(了解心理学verstehende Psychologie)ほか,ハイデッガー,ガダマーらによっても展開されている。M.ウェーバーの理解社会学verstehende Soziologieも理解を経験科学の方法として確立することを目指したもの。
→関連項目了解心理学
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普及版 字通
「了解」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典(旧版)内の了解の言及
【説明】より
…もしこの種の説明が実は説明ではないとすれば,例えば心理学における理論についての大脳生理学の理論による説明などは,実は説明ではないということになり,その影響するところはきわめて大きい。【黒崎 宏】
[説明と理解]
日本語では区別がつけがたいが,人文科学においてテキストやその背景をなす心理や精神を説明する行為は,〈理解〉または〈了解〉(英語understanding,ドイツ語Verstehen)と呼ばれることが多い。テキストを〈わかる〉もしくは〈わからせる〉ことである。…
【了解心理学】より
…人間の精神を認識する場合,心的現象を一定の要素に還元し再構成するという自然科学にならった心理学的方法では不可能であるとし,〈[了解]Verstehen〉という認識方法によってとらえようという立場の,主としてドイツにおいて発達した心理学。提唱者であるW.ディルタイによれば,了解は感性的表現や言語,身ぶりを通して対象となる心的現象を追体験,感情移入,内省することによって得られる認識である。〈自然をわれわれは説明するが,精神生活はこれを了解する〉という言葉もあるように,心的構造は了解によって生きた全体関連が記述・分析されるとし,どちらかといえば哲学的傾向が強い。…
【解釈学】より
…解釈者はテキストから生きた信仰のメッセージをひきださねばならないからである。 多様な解釈を統一する〈[了解]〉の一般理論を探求することによって,それまでの領域別解釈学を一般解釈学に普遍化しようとする動きは,19世紀にA.ベックやシュライエルマハーによって開始された。シュライエルマハーは聖書釈義学と古典文献学の両方の解釈技法を整合することに努めた。…
【説明】より
…もしこの種の説明が実は説明ではないとすれば,例えば心理学における理論についての大脳生理学の理論による説明などは,実は説明ではないということになり,その影響するところはきわめて大きい。【黒崎 宏】
[説明と理解]
日本語では区別がつけがたいが,人文科学においてテキストやその背景をなす心理や精神を説明する行為は,〈理解〉または〈了解〉(英語understanding,ドイツ語Verstehen)と呼ばれることが多い。テキストを〈わかる〉もしくは〈わからせる〉ことである。…
【ディルタイ】より
…自然科学と産業の興隆する時代の中で,先行するゲーテ時代との断絶の意識から出発したディルタイは,前時代の遺産の意識的継承によって文化的連続性の構築と,自己の文化的アイデンティティの確立をめざしたが,その重要な手段が精神科学であった。断絶を越えた連続性をつくるためには,過去を〈[了解](理解)Verstehen〉し,現在による意味づけが必要である。この考えは,教養の形成過程を描く自伝をモデルにしているが,了解こそ精神科学の中心的方法である。…
【翻訳】より
…コミュニケーション図式にすると,話し手は自分の言語(コード)を用いて文(メッセージ)を作り(コード化),それを聞き手に送る。聞き手はその文(メッセージ)を受け取ると,それに自分の言語をつき合わせて解読し了解が成立する。これをコード解読,コード変換などというが,それらも翻訳にほかならない。…
【了解心理学】より
…人間の精神を認識する場合,心的現象を一定の要素に還元し再構成するという自然科学にならった心理学的方法では不可能であるとし,〈[了解]Verstehen〉という認識方法によってとらえようという立場の,主としてドイツにおいて発達した心理学。提唱者であるW.ディルタイによれば,了解は感性的表現や言語,身ぶりを通して対象となる心的現象を追体験,感情移入,内省することによって得られる認識である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」