改訂新版 世界大百科事典 「受図書人」の意味・わかりやすい解説
受図書人 (じゅとしょにん)
李氏朝鮮時代,朝鮮から通交貿易を許可する証としての銅印(図書)を受けた日本人。これによって,受図書船を派遣することができる。受図書人は,有力守護大名から九州探題,対馬島主とその一族,島内の有力者,倭寇からの転向者,その他九州・中国方面の豪族,商人にまで及び,渡航者の数は増加する傾向にあった。そこで朝鮮では図書発給数を制限し,とくに文引の制による渡航者の統制を強化した(図書・文引)。図書は,受図書人が死ねば原則としてこれを返納し,後継者に改給されたが,実際は受図書人の生前に別人が譲りうけ,長期にわたって使用される場合が多かった。このため,使者の真偽をめぐる紛争が絶えず,三浦(さんぽ)の乱(1510)発生の一因ともなる。近世に至り,文禄・慶長の役勃発によって,戦前の受図書人は資格を失い,わずかに日朝修好回復に功績のあった宗氏,柳川氏,僧玄蘇など,対馬島内の数名が新たな受図書人とされたにすぎない。
→日朝貿易
執筆者:田代 和生
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