改訂新版 世界大百科事典 「固有時」の意味・わかりやすい解説
固有時 (こゆうじ)
proper time
アインシュタインの特殊相対性理論によると,時間の流れは絶対的なものではなく,座標系の選び方によって異なる相対的なものにすぎない。時計の進み方は,観測者に対してその時計が移動する速度によって異なってみえる。このような時間は一般に座標時と呼ばれるが,これに対して,時計といっしょに動く観測者が測る時間の進み方は座標系の選択に依存せず,固有時と呼ばれる。固有時の進み方は座標時の進み方より1/倍遅い。ここでvは観測者に対して運動している時計の速さで,cは光速度である。一例としてミューオンの崩壊を考えてみよう。この素粒子は止まっていると約2×10⁻6秒で崩壊するが,これは固有時で測った値である。速度vで走っているミュー粒子の寿命は座標時で測られるので,倍となり,vがcに近づくと非常に長くなる。
→相対性理論
執筆者:藤井 保憲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報