地理的勾配(読み)ちりてきこうばい(その他表記)geocline

改訂新版 世界大百科事典 「地理的勾配」の意味・わかりやすい解説

地理的勾配 (ちりてきこうばい)
geocline

J.S.ハクスリー(1938)によって提唱された形質の連続変化を意味するこう配clineの一つで,生物の種内または種間変異が地理的な場所により少しずつ異なり,ある形質を測定すると一定方向に連続的な変化を示す現象をいう。日本列島でも,北から南へいくにつれて連続的に変化する多くの例が知られている。ブナマイヅルソウなどの葉の大きさ,多くの植物で見られる日長反応の程度,ナミテントウの斑紋に関与する遺伝子頻度などである。地理的な位置の相違が温度,日長,雨量などの環境要因の連続的な変化を引き起こし,自然淘汰が働いてそれぞれの場所に適応した遺伝子型が生じる結果,こう配が生じる。しかし,自然淘汰とは無関係に,移住などによって変異が広まっていくときにもこう配は見られる。地理的こう配が見られるよりも,もう少し狭い地域内で,土壌中の水分塩分濃度などの生態的要因に明確な傾斜が存在し,それに沿ってある形質が連続的な変異を示すときには生態こう配ecoclineと呼ばれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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