改訂新版 世界大百科事典 「マイヅルソウ」の意味・わかりやすい解説
マイヅルソウ (舞鶴草)
Maianthemum kamtschaticum (Chamm.) Nakai
亜高山帯の針葉樹林下に多いユリ科の多年草。細い地下茎は長くはい,大きな群落をつくる。地上茎は高さ10~25cmほどで,2~3枚の葉をつける。下位の葉は卵心形で湾曲したよく目だつ平行脈をもつ。和名はこの特徴をツルが羽根をひろげた形に見立てたものである。花はやや密な総状花序につき,5~7月に咲く。花被は白色で4枚あり,長さ約2mm。おしべは4本。果実は径5~7mmの球形で,熟すと赤くなる。日本本土に広く分布し,南限は屋久島である。そのほか,中国大陸東北部,朝鮮半島,東シベリア,カムチャツカ,北アメリカ西部に広く分布する。近縁種ヒメマイヅルソウM.bifolium (L.) F.W.Schm.は,茎や葉裏や葉縁に突起状の毛があるので,区別される。ユーラシアの亜寒帯に広く分布し,日本では北海道と本州中部にある。マイヅルソウ属にはほかにカナダマイヅルソウM.canadense Desf.(英名two-leaved Solomon's seal)があり北アメリカ東部に分布する。3種ともに観賞用に栽培される。屋久島産のマイヅルソウは草丈5cm程度の矮性(わいせい)型で,岩付け用に用い,ヒメマイヅルソウは止血剤に用いられる。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報