改訂新版 世界大百科事典 「地蠟」の意味・わかりやすい解説
地蠟 (ちろう)
earth wax
鉱物蠟の一種。オゾケライトozokeriteともいう。成分はCnH2n,ときにCnH2n+2の炭化水素が主成分で,動植物から得られる蠟(脂肪酸と水に不溶な高級一価アルコール類または二価アルコール類とのエステル)とは化学的成分を異にするものである。精製したものはセレシンの名称がある。ヨーロッパ,旧ソ連,エジプト,アメリカなどの石油鉱床,石炭鉱床に産し,とくにウクライナのボリスラフ地方の油田が名高い。石油中のパラフィン油の硬化,重合などによって生じたものと考えられる。蠟状または塊状で産出。可塑性のある固体で,硬いものから軟らかいものまで各種ある。融点は60~80℃で比較的高い。市販品にはパラフィンワックスを配合したものもある。色調は黄色ないし暗褐色,褐色,緑,赤などの色を帯びたものがあり,精製品は黄または白色。他の蠟などと混合しやすく,溶剤保持力が大である。用途はペイント,ワニス,ポリッシュ(光沢剤),インキ,ろうそく,サイジング剤,カーボン紙,蠟紙,防水布,電気絶縁剤,フッ化水素酸の容器,クレヨン,潤滑剤,封蠟,クリームや口紅などの化粧品,医薬品など。カルナウバ蠟,蜜蠟の代用品ともされる。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報