改訂新版 世界大百科事典 「坊主衆」の意味・わかりやすい解説
坊主衆 (ぼうずしゅう)
日本中・近世の僧侶の一身分。平安末期以降,本来寺院に属すべき僧侶の屋舎が,僧侶個人の私的所有物と化し,その屋舎を坊(房),坊の主を坊(房)主と呼ぶようになった。当初,坊主の称は,坊舎を持たぬ法師などと区別されて使われていたが,室町期以降,宗教施設の差異(寺院,道場)にかかわらず,一般僧侶をも指すようになった。同一坊舎内,あるいは他所に住する,坊主に従う人々を門徒という。坊主と門徒との関係は,法名下付を媒介にした,名付け親と養子・猶子との関係である。両者は擬制的な家を形成しているものとみなされる。門徒衆身分の者がいなければ,単独で坊主衆身分の者は存在しえない。また,ある者が坊主衆身分でありながら,同時に,より上位の坊主の家に包括される門徒衆身分である場合もある。中・近世の各門流・教団の身分編成は,ほとんど官位によらず,この概念によった。それゆえに坊主の称は,僧侶の通称と化したのである。
執筆者:金龍 静
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報