官職と位階をいう。
律令官人制機構では,位階による官人の序列と,機構の中での官職の位置との対応関係があり,これを官位相当制という。一定の段階まで発展した官人制機構では,その円滑な運営のために,この規定が必須になる。現存する養老令の官位令はその規定である。日本の位階制は603年(推古11)の冠位十二階で創始されたが,これにも一応,漠然とした対応関係がみられたと推測することも可能である。しかし,それは厳密な官位相当制ではありえない。その成立の端緒は天武朝であり,689年(持統3)施行の飛鳥浄御原令(きよみはらりよう)では,一定幅の冠位群と一定数の官職群との対応関係が規定されていたと推測できる。つづく701年(大宝1)の大宝律令で,厳密な意味での官位相当制が確立し,養老令に引き継がれた。その官位令では,親王一品は太政大臣,諸王・諸臣の正・従二位は左・右大臣,正七位上は中内記・大外記そのほかというように,位階を軸にして,それぞれの位階に対応する官職群が規定されている。唐の官品令が,官職を主体にして,官職の等級表という性格を示すのに対して,日本の官位令は,位階が官人序列の基本的標識であり,官職が従的な位置を占めていることを物語っている。なお,官位令には,正三位の相当官末尾にみえる勲一等から,従八位下相当官末尾の勲十二等にいたる勲位が記載されているが,これは官位相当とは異質のものであり,それぞれの勲位が,官人序列のうえで,その位階に準じて末席に位置づけられることを示す比当(ひとう)関係にすぎない。そして官人が相当規定どおりに任命されない場合を想定して,大宝選任令,養老選叙令には,〈行(ぎよう)〉(位階が高いケース),〈守(しゆ)〉(官職が高いケース)をつける規定が立条されている。この官位相当規定は,すでに奈良時代前半から〈行〉の任命ケースが多い傾向がみえ,またその後,平安時代初期にかけて若干の相当規定の改訂がみられた。
執筆者:野村 忠夫
律令制における官職位階は武家に政権が移ってからは有名無実化していたが,近世に入ってからも国郡制などと同様にその命脈を保ち,官位の授与は暦の制定,元号の制定とともに統治権的権能として依然朝廷に留保されていた。ただし,公家衆の官位といえども高位高官の場合は江戸幕府の干渉下にあり,武家の官位は実質的には幕府が叙任し朝廷はこれを認証するにとどまった。武家の官位については,徳川家康が1606年(慶長11)幕府の推挙をもって叙任するように奏請,11年には武家の官位は朝廷の官位の定員外とする旨を奏し,15年(元和1)制定の《禁中並公家諸法度》でこれを明文化し,〈武家の官位は公家当官之外たるへき事〉と規定している。その叙任の方法は,4代家綱時代まではまず朝廷に奏上しその後に幕府が叙任する例であったが,5代綱吉時代以後は幕府が叙任しその後に朝廷の位記口宣を申請するというものであった。将軍および世子以下の官位昇進の次第は3代家光時代にその例規が定まり,将軍宣下とともに正二位内大臣となり,のち従一位左大臣に進み,正一位太政大臣を追贈され,世子は従二位権大納言となり右大将を兼ねるのを例とした。御三家,万石以上の大名の官位もその地位の高下,家格によって定まっていて,尾張・紀伊両家の従二位権大納言,水戸家,御三卿の従三位権中納言,加賀前田家の従三位参議を最高とし,以下従五位下まで数等に分かれ,城主格以上の大名は従五位下の国守に叙任されるのを例とした。いわば,官位は家格と一体のものとして扱われ,その高下は,江戸城中の座席や礼法等の差異にもあらわれた。その他,僧侶,神主,医者,職人等に対する官位があり,とくに地方の神主の叙任は吉田家が関与し,これをとくに宗源宣旨という。なお官位授与の礼として,朝廷に金品を献納することを謝思,あるいは官金といい,これが朝廷側の枢要な臨時収入にもなっていた。
執筆者:橋本 政宣
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官職と位階。令(りょう)制では、位階に相当する官職を定め、これに拠(よ)って官吏を任命するのを原則とした。
[編集部]
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…しかし,そのような地域的区分が,はたして中世以来のものであるか否かについては,まだなんらの確証も得られていない。【鈴木 国弘】
[近世]
戦国時代に下剋上などの社会的な大変動で家格の観念も大きく変わったが,有力諸大名は朝廷に献金して官位を受けたり,将軍の諱(いみな)の1字を与えられたりして,その権力を誇示するのに利用した。江戸幕府が成立すると,1606年(慶長11)武家の官位は将軍の推挙によることとし,11年には武家の官位は員数外としたので,律令の定数とは関係なく自由に奏請することができるようになった。…
※「官位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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