執行役員制度(読み)しっこうやくいんせいど(英語表記)executive officer system

知恵蔵 「執行役員制度」の解説

執行役員制度

日本の取締役会欧米のそれと比較して構成員が多い、社外取締役が際立って少ない、取締役会自体が機能していないことなどに加えて、受託機能、監督機能、執行機能が未分化であり、業務執行に対する内部監視が十分にできない構造になっている。そこで、取締役とは別に業務執行にあたる執行役員(CO)をおき、取締役会が執行役員の業務執行を監督し、併せて責任の明確化と意思決定の迅速化を図るべくして、執行役員制度が導入された。商法上の規定がなかった1997年、ソニーで採用されて以来急速に普及した。ただ、米国では取締役の受託機能といった場合、株主から付託されたもので、この株主の利益という観点から取締役会による執行役員の監視が行われている。それができるのは、取締役の過半数が株主の利益を代弁する社外取締役の存在であるし、カルパースなどのような圧倒的な資金力を誇る年金基金を始めとする大株主の存在である。執行役員の長である最高経営責任者(CEO)は、同時に取締役会の会長となっている場合が多く、そのCEOが株主の利益を損ねることになれば、取締役会で罷免されることも珍しくない。日本での執行役員制度の導入は直ちに米国のようにはならないとしても、一歩足を踏み出したことは明らかである。 こうした米国型企業統治制度に、一定距離を保ち日本企業固有の経営方式の必要性を主張してきたキヤノンも2008年4月から執行役員制度の導入を決めた。これには既存分野の強化と新規事業の拡大に伴う経営規模の拡大、経営と執行の分離による経営層の育成への対応を図る狙いがある。

(高橋宏幸 中央大学教授 / 2008年)


執行役員制度

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出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

人材マネジメント用語集 「執行役員制度」の解説

執行役員制度

・corporate officer
・株主総会によって選任され、企業を管理監督・経営する取締役と企業における業務遂行を司る執行役を分離した制度。
・執行役員とは、会社の業務執行に対する責任と権限を持つ役員であり、「代表取締役の指揮命令下にある会社使用人」であり、法的定義のある取締役とは異なる。
・近年のコーポレートガバナンスの強化の流れを汲んで、「経営に専念する人(取締役)」と「業務の執行に専念する人(執行役員)」を分離してそれぞれの役割分担を明確にする執行役員制度が導入されてきた。
・取締役が取締役会による会社経営の観点での意思決定を行うのに対して、執行役員は取締役から委任された日常の業務遂行の執行権限によりに業務上の意思決定を行う。
・執行役員は商法上の役員ではなかったが、2006年の会社法施行により、委員会等設置会社においては、商法上の位置づけが明確になった。

出典 (株)アクティブアンドカンパニー人材マネジメント用語集について 情報

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