日本大百科全書(ニッポニカ) 「企業広告」の意味・わかりやすい解説
企業広告
きぎょうこうこく
企業の経営方針、歴史・伝統、生産・技術・研究、製品の多様性、社会への貢献など、企業のイメージ、社会性などを訴求する広告。直接製品やサービスを訴求する商品広告product advertisingと対比されるが、その間に一線は引きえない。日本でも、すでに明治時代からこの種の広告はみられるが、「企業広告」ということばは、第二次世界大戦後アメリカから導入されたインスティテューショナル広告institutional advertisingの訳語として生まれた。初め「制度的広告」ともよばれたが、1950年代の広告活動は産業界がほとんどすべてであったことから、企業広告という呼び名で定着し、PRやマーケティング戦略の一環として位置づけられた。コーポレート広告corporate advertisingあるいはPR広告public relations advertisingともいう。ほぼ類似の概念であるが、政府から非経済団体まで広告活動を行う現代では、PR広告というほうが包括的である。その訴求目的との関連で公共(奉仕)広告、意見広告などとも名づけられる。
アメリカでは、企業広告は20世紀初頭にすでに出現しているが、戦後、高度産業社会の進展のなかで、企業イメージの統合や強大になってきたビッグ・ビジネスへの社会的批判への対応が、この種の広告活動を新展開させた。
日本で企業広告がブームとなったのは、1960年代、高度経済成長のスタート以降である。1970年代には、消費者、環境、資源・エネルギーなどで企業が対応を迫られる課題が山積し、意見広告的な様相も示している。また、1970年代以降、地球温暖化など環境問題の広がり、経済のグローバル化などを受けて地球規模で問題を提示する広告活動が目だってきている。
[小倉重男]
最近では、企業のコンプライアンス(法令遵守)やCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)への取組を具体的に紹介するものもみられるようになった。
[編集部]