チーフ・エグゼクティブ・オフィサーchief executive officerの略で、最高経営責任者と訳す。アメリカ型の企業統治組織形態をとる企業における役職名である。アメリカ型企業統治組織は、取締役会(ボード)と執行役(オフィサー)の2段階になっている。このうち取締役会は、通常3分の2の社外取締役と残りは社内取締役で構成されているが、この取締役会の会長をCEOと呼称し、執行役の代表も兼ねている企業が大多数を占めている。CEOは、会社の戦略決定と執行役の経営監査、業務執行の役割を一人で担うケースが多いため、アメリカの大統領と比較されるほど大きな権限を有する。なお、日本企業の会長とは呼称は同じでも役割と権限は異なる。日本企業の会長は代表権をもたない名誉職で、財界活動などの対外的活動が中心となるケースが多い。一方、代表権を保持し実力会長として院政を敷くケースもあり、実態は多様である。
1997年(平成9)に、日本の電子機器メーカーであるソニーは先駆的な取締役会の改革を行った。38名の取締役を10名に減らし、34名の執行役員を設けた。いわゆる執行役員制の導入である。その後日本では、2003年(平成15)4月から改正商法が施行され、資本金5億円以上または負債の合計金額200億円以上の大会社は、アメリカ型の取締役会をモデルとした委員会等設置会社を選択して導入できるようになった。ソニーの執行役員制と類似した制度を、数多くの日本企業がすでに導入していたため、改正商法はこれを追認したといえる。
2006年の商法から会社法への移行時、委員会等設置会社は委員会設置会社に名称変更し、大会社の規模規制も撤廃された。現在、この制度を導入する日本企業の多くは、アメリカ型のCEOを採用している。このため、新聞、雑誌等ではCEOという肩書きで紹介される企業のトップが増えている。なお、会社法第362条に規定されている代表取締役の一人としてCEOも就任できる。まさに、会社の代表機関として位置づけられる。
なお、日本企業でCEOは増加しているが、アメリカ企業では見直しが始まっている。エンロンやワールドコムなどの不祥事を反省し、権限が集中しすぎているCEOを、取締役会の会長のみとし、執行役を兼務させないという分離の動きがでている。
[丹羽哲夫]
(高橋宏幸 中央大学教授 / 2007年)
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