増大胞子(読み)ぞうだいほうし(その他表記)auxospore

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「増大胞子」の意味・わかりやすい解説

増大胞子
ぞうだいほうし
auxospore

ケイ藻類にみられる特殊な胞子。ケイ藻類はその細胞ケイ酸より成る堅い殻をかぶっているので,分裂時には常に旧殻内側に新細胞膜と新殻を生じ,分裂を重ねるに従って小型となる。しかしある時期に分裂の際,旧殻をすべて放棄して細胞質がその体積を十分に回復し,大型の新殻に包まれるようになる。このとき生じる新しい細胞を増大胞子と名づける。多くの羽状類 (ハネケイソウなど) において増大胞子は接合子の役割を果している。すなわち配偶子の接合に続いて増大胞子の形成がみられる。ただしオートガミー (自家接合) が確認されたり,確実に単為的に形成されるとみられるものも少くない。中心類 (イトマキケイソウなど) については長い間無性的な増大胞子形成が行われるとされてきたが,近年,合着によることが明らかにされた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「増大胞子」の意味・わかりやすい解説

増大胞子
ぞうだいほうし
auxospore

珪藻類(けいそうるい)に特有の胞子。珪藻類は細胞分裂を重ねて増殖するが、細胞はしだいに小形化する。このため、ある程度小形化した細胞は配偶子形成のあと、殻を出て接合または受精を行い、接合子となる。接合子は吸水と増大を行い、新殻を形成して大きさを回復する。この増大した細胞を増大胞子という。

小林 弘]

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世界大百科事典(旧版)内の増大胞子の言及

【ケイ藻類(珪藻類)】より

…そこで有性生殖を行って体の大きさを回復させる。このときつくられた接合子は増大胞子auxosporeと呼ばれる。 ケイ藻類は白亜紀の地質時代に大発生をしたらしく,この時代の地層に多数の化石堆積物が発見される。…

※「増大胞子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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