日本大百科全書(ニッポニカ) 「変調回路」の意味・わかりやすい解説
変調回路
へんちょうかいろ
modulator
情報を搬送波にのせて送るため、情報を変形(変調)するのに用いられる電子回路をいう。情報の伝達には、ケーブル、電波、光など使用する伝送媒体に適した搬送波に情報を変形してのせて送り、受信号を元の信号に戻し(復調)て取り出す操作が行われる。搬送波は、信号のひずみを少なく、伝送路を有効に利用できるよう信号よりもはるかに高い周波数の電流とか電磁波が用いられ、情報を遠距離に高品質で送れるようくふうされている。変調方式は、情報により直接連続して搬送波を変形するアナログ変調と、情報をまず数値信号化して搬送波を変形するデジタル変調、およびこの両者を組み合わせた複合変調があり、それぞれに適した変調回路が利用されている。
アナログ変調には振幅変調(AM)、周波数変調(FM)、位相変調(PM)のほか、パルス振幅変調(PAM)、パルス幅変調(PWM)、パルス位置変調(PPM)、パルス周波数変調(PFM)がある。AMは搬送波の振幅を信号で変形するもので、トランジスタのコレクタまたは送信管の陽極を変調信号で変形するコレクタ変調回路または陽極変調回路がある。トランジスタでは、ベースのバイアス電圧を変調信号で変形して搬送波信号を入力するベース変調回路と、エミッタのバイアス電圧を変調するエミッタ変調回路がある。FMは搬送波の周波数を変形するもので、インダクタンスとコンデンサーの共振回路に可変容量ダイオードを用いる可変リアクタンス変調回路が普通用いられるが、トランジスタを利用した変調回路も実用されている。PAM変調回路は搬送パルスが加わったときのみ入力信号が出力側に現れる回路で、ダイオードブリッジによる平衡ゲートとか、トランジスタを用いたゲート回路を用いる。PWM変調回路は、PAMされた信号電圧とクロック同期した比較波(たとえば三角波)と比較してパルス幅を得る方法を用いる。PPM変調回路は、PWM信号を微分回路により取り出すか、PWM変調回路の比較器の動作時にパルスを発生する回路を用いる。
デジタル変調は、標本化されたPAM信号を二進化符号に変換する符号化回路を用いる。符号化回路はPAMの電圧値を2n個の量子化ステップと比較して、2n-1,2n-2,……,20のいずれの領域に相当するかを求め二進符号を求めるもので、計数型、並列型、継続型、帰還型がある。
[岩田倫典]
『電子通信学会編・刊『電子通信工学概論』(1979)』