振幅変調(読み)シンプクヘンチョウ(英語表記)amplitude modulation

デジタル大辞泉 「振幅変調」の意味・読み・例文・類語

しんぷく‐へんちょう〔‐ヘンテウ〕【振幅変調】

信号波の振幅に応じて電波の強さ(振幅)を変える通信方式ラジオ放送中波短波アナログテレビ放送の映像送信などに利用。AM。→周波数変調

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精選版 日本国語大辞典 「振幅変調」の意味・読み・例文・類語

しんぷく‐へんちょう‥ヘンテウ【振幅変調】

  1. 〘 名詞 〙 電波によって音声や映像の信号を送る方式一つ搬送波の振幅を信号波の大きさに応じて変化させて通信する。中波・短波のラジオ放送、テレビジョンの映像通信、長距離電話回線などに利用される。AM。周波数変調(FM)に対することば。
    1. [初出の実例]「振幅変調電波に於て振幅の変化が」(出典:航空工学便覧(1940)〈日本航空学会〉一九)

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改訂新版 世界大百科事典 「振幅変調」の意味・わかりやすい解説

振幅変調 (しんぷくへんちょう)
amplitude modulation

AMともいう。搬送波の振幅を情報に従って変化させる変調方式をいう。搬送波が正弦波,

 st)=Acos(ωct+θc)  ……(1) 

で変調信号vt)がアナログ信号の場合,基本的な振幅変調を受けた搬送波は,

 st)=A{1+kvt)}cos(ωct+θc)   ……(2) 

となる。ここに,kは定数で,kvt)の絶対値が1を超えない値である。kvt)の絶対値の最大値を変調度という。式(2)の波形は,図のaのようになる。いま,変調信号が正弦波で,

 kvt)=m cospt   ……(3) 

と表されるとすると,st)は次のようになる。

式(4)の第1項は,変調を受けないときの搬送波そのものであり,第2項は,角周波数がωcpで上側波帯,第3項は,角周波数がωcpで下側波帯という。これらの成分の中で情報を有する部分は両方の側波帯のみであり,さらに,通信に必要な部分はそれらのうちのいずれか一方のみである。両側波帯とも伝送する方式を両側波帯double sideband(DSB)変調,上または下側波帯の一方のみを伝送する方式を単側波帯single sideband(SSB)変調という。いずれの方式においても,搬送波を伝送する場合と伝送しない場合がある。SSBはDSBに比べ,占有帯域幅が半分ですみ,送信電力も小さくなる。また,搬送波を送らない方式は,送る方式と比べて送信電力が小さくなる。しかし,復調は,搬送波がある場合のほうが容易である。搬送波付きのDSBは中波放送などで,抑圧搬送波SSBはいろいろの周波数帯の無線電話通信などでよく用いられている。このほか,残留側波帯変調という方式もある。変調信号vt)がディジタル信号の場合,振幅変調は,ASKamplitude shift keyingの略)と呼ばれる。ASKの信号は,次のように表される。

 st)=Avt)cos(ωct+θc)  ……(5) 

ASKでは,vt)のレベルのとり方により搬送波成分が生ずる場合と生じない場合がある。vt)が±1の値をとる2値ASKは,2相PSK(phase shift keyingの略)と等しい信号である。これ以外のASKはあまり用いられないが,ASKとPSKを組み合わせたAPKamplitude phase keyingの略)は広く用いられている。APKの一部をQAMquadrature amplitude modulationの略)ともいう。搬送波がパルス列の場合の振幅変調は,パルス振幅変調pulse amplitude modulation(PAM)という。変調信号がアナログ信号の場合の波形は,図のbのようになる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「振幅変調」の意味・わかりやすい解説

振幅変調
しんぷくへんちょう
amplitude modulation

無線通信においてもっとも古くから行われてきた変調方式。略してAMという。中波や短波のラジオ放送、およびNTSC方式のテレビ映像信号の伝送などに広く用いられている。搬送波を変調するにあたり、伝送すべき信号電流の振幅変化に応じて搬送波の振幅に変化を与え、その包絡線が信号波形と相似となるようにした変調方式である。

 しかし、搬送波の振幅に変化を与えようとすると、搬送波を中心として信号の周波数だけ高い周波数、および低い周波数の二つの周波数が発生する。これを側波帯といい、信号の周波数が変化するとその側波帯の周波数が変化し、振幅が増減するとその振幅が増減する。振幅変調を行っても搬送波にはなんの変化も生じないので、搬送波には情報の成分は含まれず、情報を伝えるのは側波帯だけなのである。100%変調の場合でも、側波帯の振幅は搬送波の半分しかないから、片方の側波帯の電力は搬送波の4分の1しかない。全送信電力の3分の1だけが側波帯の電力の最大値となるから、能率がよいとはいいがたい。占有周波数帯の幅は、信号波に含まれるもっとも高い周波数の2倍になる。たとえば、中波のラジオ放送では、無線設備規則第6条・別表第2号で、電波の占有する幅を15キロヘルツと決められているので、ラジオで伝送できるもっとも高い周波数は7.5キロヘルツとなる。

[石島 巖]

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百科事典マイペディア 「振幅変調」の意味・わかりやすい解説

振幅変調【しんぷくへんちょう】

AM(amplitude modulationの略)とも。信号波の変化に応じて搬送波の振幅を変える変調方式。変調・検波とも容易で,最も古くから用いられ,中・短波ラジオ放送,テレビの映像放送,無線通信,有線搬送通信等に広く利用される。→周波数変調
→関連項目AM検波振幅

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「振幅変調」の解説

振幅変調

アナログ信号でビットデータを送信するための変調方法の1つ。振幅変調では、キャリア波の振幅に強弱をつけ、この違いにそれぞれ0または1を割り当てることで、ビットデータを転送できるようにする。AMラジオ放送では、この振幅変調が利用されている。電話回線を経由する信号の振幅は音の強さにかかわる部分で、雑音の影響を受けやすいため、モデムでは純粋な振幅変調は利用されていない。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「振幅変調」の意味・わかりやすい解説

振幅変調
しんぷくへんちょう
amplitude modulation

搬送波の振幅を信号波の振幅に応じて変化させる変調法。略して AM。変調には真空管,トランジスタあるいはダイオードなどを用い,これを復調するには,ダイオードなどのような非線形素子を通して行う。振幅変調は,長波から短波にいたる電波を用いた通信や有線での多重搬送通信などで広く使われる。

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