多可郡(読み)たかぐん

日本歴史地名大系 「多可郡」の解説

多可郡
たかぐん

面積:二二〇・九〇平方キロ(境界未定)

八千代やちよ町・なか町・黒田庄くろだしよう町・加美かみ

加古川本流に臨む黒田庄町、支流杉原すぎはら川流域の加美町・中町、支流野間のま川流域の八千代町の三つの川の流域四町からなり、ほぼ県中央部を占める。北から東にかけて氷上ひかみ郡、北の一部は朝来あさご郡、東から南にかけて西脇市、南は加西市、西は神崎かんざき郡に接する。北部の加美町ではせんヶ峰(一〇〇五・二メートル)をはじめとして標高八〇〇―一〇〇〇メートルの山々が郡境にそびえる。その南に位置する八千代町では西側郡境の笠形かさがた(九三九・四メートル)が高い。前記三河川が南流して、全体に北が高く、南が低い地形となっている。杉原川沿いに国道四二七号が南北に通じ、播州トンネルによって丹波の街道と結ばれる。江戸時代には北部は丹波・但馬両国に接していて、山陽道よりも山陰道に近く、そのため山陰道からの影響を受けることが多かった。

〔古代〕

和名抄」の諸本ともに訓を欠く。「延喜式」武田本巻一〇の神名下にみえる多可郡の訓はタカである。播磨国北東部に位置し、古代の郡域は東に丹波国氷上多紀たき両郡、南は賀茂かも郡、西は神崎郡、北は但馬国朝来郡と丹波国氷上郡に囲まれていた。現在の行政区画で示すと北から神崎町の北東部、加美町・中町・黒田庄町の全域、八千代町の南西部と西脇市の西端の一部を除く大部分を占めることとなる。「播磨国風土記」では託賀たか郡と記し、郡名はこの土地は天が高いことによるとする。同書は賀眉かみ里・黒田里・都麻つま里・法太ほうだ里の里名と、大海おおみ山・荒田あらた村・袁布おふ山・支閇きへ丘・大羅野おおあみの都太岐つたき比也ひや山・鈴堀すずほり山・伊夜いや丘・目前田まさきだ阿多加野あたかの甕坂みかさか花波はななみ山の小地名説話を記載している。法太里の条に、丹波と播磨の境界の坂に大甕を埋めて甕坂というとある。その坂がいまの西脇市と加西市の境の二ヵ坂のこととすると、かつて当郡は丹波国に属していたことになる。木簡では「(播磨)国多可郡人」(平城宮跡出土木簡)、「(表)播磨国多可郡□」「(裏)米戸主宅部国□」「(表)播麻国高郡□」「(裏)五斗 戸主日下部古又三□ 戸主日下部  戸主日下部□」(平城京二条大路跡出土木簡)のほか、那珂なか郷・蔓田ほうだ郷のものがある。また賀美かみ郷と那珂郷にかかわる正倉院文書などから、在地氏族として宅部・日下部・山直・宗我部・高屋各氏の存在を知ることができる。

「和名抄」は当郡に荒田・賀美・那珂・資母しも・黒田・蔓田の六郷を記すので、養老令の基準では下郡である(「令義解」戸令定郡条)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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