兵庫県中北部の市。2005年4月旧朝来と生野(いくの),山東(さんとう),和田山(わだやま)の4町が合体して成立した。人口3万2814(2010)。
朝来市中西部の旧町。旧朝来郡所属。人口7549(2000)。円山(まるやま)川上流域に位置し,中国山地の山に囲まれ,町域の大部分を山林が占める。北流する円山川沿いに水田が開け,国道312号線とJR播但線が通り,播但連絡道路のインターチェンジがある。米作,畜産などを中心とした農業が行われる。円山川支流神子畑川上流には三菱金属明延(あけのべ)鉱山神子畑選鉱場跡や国の重要文化財になっている神子畑鋳鉄橋がある。東部に1975年に完成した関西電力奥多々良木発電所(最大出力193万2000kW)がある。
朝来市南部の旧町。旧朝来郡所属。人口5077(2000)。中国山地の分水嶺にあたり,瀬戸内海へ注ぐ市川と日本海へ注ぐ円山川が流れる。《播磨国風土記》によれば,ここに荒ぶる神がいて道行く旅人の半数を殺したので,〈死野(しにの)〉と呼ばれたが,応神天皇の勅によって生野と改められたという。807年(大同2)の発見とされる生野銀山とともに発展してきた町で,延喜年間(901-923)にはすでに採掘されていたといわれる。その後一時廃鉱となったが,天文年間(1532-55)に山名祐豊によって再び採掘が始まり,戦国大名山名氏の経済を支えた。江戸時代は幕府直轄の銀山となり,幕府は生野代官を置いて盛んに採掘し,最盛期の慶長・元和期(1596-1624)には鉱山町も形成された。明治に入って官営となったが,1896年に三菱の経営に移り,1940年ころには日産3万tの銅,鉛,亜鉛などを産出した。その後,主鉱脈が掘りつくされ,73年に閉山した。以降,急激な人口減少と産業構造の急変をみるが,旧代官所跡や鉱山博物館(シルバー生野)の設立などによって鉱山跡地の観光開発が進められている。また生野工業団地も造成されている。
朝来市北東部の旧町。旧朝来郡所属。人口6392(2000)。南部は粟鹿(あわが)山などの山々が連なり,北部は盆地状をなし,円山川上流の与布土川などが北流する。山陰本線梁瀬駅のある中心の梁瀬は山陰道の旧宿駅で,メリヤス工場がある。農業は米作と畜産が中心となっている。夜久野ヶ原はソバの産地として知られ,苗木の生産も行われる。
朝来市北部の旧町。旧朝来郡所属。人口1万7051(2000)。東は京都府に接する。円山川上流に位置し,周囲は山に囲まれているが,山陰道と生野街道の分岐点として早くから開け,城ノ山古墳や池田古墳(前方後円墳)などがある。15世紀半ばには山名持豊(宗全)が,南部の竹田にある古城山(354m)に竹田城(虎臥城)を築いた。竹田城は1577年豊臣秀吉に攻められて落城したが,中世の代表的な山城といわれ,遺構は国の史跡に指定されている。明治以降,養蚕を基礎に製糸・紡織工場が立地し,JR播但線と山陰本線が開通してその分岐点となった。現在,繊維工業は衰退し,工業では金属ばねや和田地区の和家具の生産に特色がある。農業では円山川沿いの水田が南但馬の穀倉と呼ばれるほか,畜産,酪農なども行われる。山王神社の例祭(7月15日)には〈ざんざか踊〉(豊作祈願の太鼓踊)が奉納される。赤淵神社本殿(室町期)は重要文化財。但馬吉野と呼ばれ,桜の名所で知られる立雲(りつうん)峡は,竹田城跡から円山川をはさんだ対岸の朝来山(756m)中腹にある。播但連絡道路が通じる。
執筆者:松原 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
兵庫県中部北寄りにある市。北東部を京都府と接する。2005年(平成17)、朝来郡生野町(いくのちょう)、和田山町(わだやまちょう)、山東町(さんとうちょう)、朝来町が合併して市制施行、朝来市となる。市名は郡名を採用。市域の大部分は播但(ばんたん)山地に展開。南部の分水界に発する円山川(まるやまがわ)は、市の中央を北流して豊岡市域に抜け、のち日本海に至る。やがて播磨灘(はりまなだ)に注ぐ市川(いちかわ)は、市の南東部を源流とし、黒川(くろかわ)渓谷などの谷を刻みながら南西に流れる。円山川とその支流域に狭小な平地が開ける。JR山陰本線、国道9号、427号が北部を横断、和田山(駅)で分岐する播但線、国道312号は、市の南部域を縦断して神崎(かんざき)郡神河(かみかわ)町域に抜ける。南東部を国道429号が走る。和田山地区は交通の要衝で、南丹地方の政治、経済の中心。312号に並行する播但連絡道路と北近畿豊岡自動車道(きたきんきとよおかじどうしゃどう)も和田山ジャンクションで接続する。
和田山町平野(ひらの)の池田古墳(いけだこふん)は但馬地方最大の前方後円墳、同町筒江(つつえ)の茶すり山古墳(国指定史跡)は中期の大型円墳で、但馬地域を掌握した首長の墓とみられる。古代の山陰道は市域北部を通り、粟賀(あわが)駅が置かれていた。枚田(ひらた)の赤淵神社(あかぶちじんじゃ)は『延喜式』記載の同名社に比定され、本殿は国指定重要文化財。かつて当地は、但馬と播磨、丹波の国境の要衝として重視され、広谷(ひろたに)荘、伊由(いゆ)荘、竹田(たけだ)荘、与布土(ようど)荘、朝来荘など、成立した荘園の多くが皇室領や摂関家領、また関東御領であった。室町時代には但馬の守護山名氏が領したが、1443年(嘉吉3)山名持豊は播磨の赤松氏に備えて、守護代太田垣氏に竹田城を築かせたという。以後太田垣氏が同城を拠点に朝来郡を管轄。応仁の乱では侵入した丹波の細川勢を太田垣勢が夜久野(やくの)で撃退している。16世紀に生野銀山の採掘が始まり、太田垣氏の支配下に銀山町が成立、1569年(永禄12)織田信長が銀山を接収。豊臣政権下で竹田城主として入部した赤松広秀は、同城を大改修。広秀改修とされる石垣遺構が完存する竹田城跡は国指定史跡。江戸時代、生野銀山は幕府が直轄、最盛期には灰吹銀高は1千貫を超え、銀山町の人口も2万人を数えたという。銀山は1973年(昭和48)に閉山となったが、現在は史跡として整備されている。15世紀末から銀を産出したという神子畑鉱山(みこばたこうざん)は、江戸初期頃までが盛期であった。明治維新後、優良鉱脈が外国人技師によって発見され、ふたたび活況を呈したが、1909年(明治42)に近くの明延鉱山(あけのべこうざん)(養父(やぶ)市)で錫鉱が発見され、神子畑鉱山は衰退。一方で、明延産出の錫鉱の大規模な選鉱場が神子畑に建設された。鉱石運搬道路に架けられた明治期の神子畑鋳鉄橋は国指定重要文化財、旧神子畑鉱山事務舎(技師ムーセの旧居)は県指定文化財。なお生野、明延、神子畑鉱山関連遺産は、生野鉱山の名称で経済産業省の近代化産業遺産に認定されている。
現在の基幹産業は農林畜産業で、米作、肉牛、乳牛飼育や養鶏が盛ん。東部は朝来群山(ぐんざん)県立自然公園、北部は出石糸井(いずしいとい)県立自然公園に属し、市川をせき止めた人口湖の銀山(ぎんざん)湖(生野銀山湖)、生野高原など豊かな自然と史跡を生かした観光の活性化が計られている。地場産業の竹田家具は赤松広秀が漆器作りを奨励したことに始まるという。半導体関連、金属バネなどの工場のほか、生野工業団地、和田山工業団地が造成され、進出・操業する企業も多い。面積403.06平方キロメートル、人口2万8989(2020)。
[編集部]
兵庫県中央部、朝来郡にあった旧町名(朝来町(ちょう))。現在は朝来市の中西部を占める一地区。旧朝来町は1954年(昭和29)中川、山口の両村が合併、町制を施行して成立。郡名をとって町名とした。2005年(平成17)生野(いくの)、山東(さんとう)、和田山(わだやま)の3町と合併、市制を施行して朝来市となる。播但(ばんたん)山地に位置し、円山(まるやま)川が旧町域中央部を南から北へ貫流し、この谷をJR播但線と国道312号、播但連絡道路が走って、但馬(たじま)と播磨(はりま)を結ぶ。国道312号は立野(たての)で国道429号を分岐する。神子畑(みこばた)は15世紀末から銀を盛んに産出し、一時官営鉱山ともなったが、その後、明延(あけのべ)鉱山(養父(やぶ)市)の選鉱場となる。
農業、林業と鉱業が中心であるが、明延鉱業の合理化に伴い、1971年には人口も激減し、1975年に完成した揚水式発電所の奥多々良木発電所(おくたたらぎはつでんしょ)は、町勢振興の柱となった。この発電所は1998年(平成10)に増設工事が完了、最大出力193万キロワットと日本有数の揚水式発電所となった。1987年には明延鉱山が閉山。1885年(明治18)に外国人技師の架けた神子畑鋳鉄橋は国指定重要文化財、八代(やしろ)の大ケヤキは国の天然記念物である。
[大槻 守]
『『朝来町史』上下(1981~1982・朝来町)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…紀伊水道に注ぐ富田川下流に位置し,中央部を西南に流れる富田川沿いに小低地が開け,紀南地方の穀倉地帯となっている。中心集落の朝来(あつそ)は熊野街道の海岸回りの大辺路(おおへじ)(現,国道42号線)と内陸の中辺路(なかへじ)(現,国道311号線)の分岐点で,古来交通の要地であった。国道42号線に並行して紀勢本線が走る。…
※「朝来」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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