家庭医学館 「多嚢胞性異形成腎」の解説
たのうほうせいいけいせいじん【多嚢胞性異形成腎 Multicystic Dysplastic Kidney】
あきらかな遺伝性はなく、多くは片側の腎臓に嚢胞ができる病気です。
嚢胞のある腎臓の組織は未熟なため、腎臓の機能はありません。
[症状]
新生児期に腹部腫瘤(ふくぶしゅりゅう)があることで発見されることが多かったのですが、最近は、胎児(たいじ)超音波検査によって、出生前に発見できるようになっています。
[検査と診断]
腎超音波検査、CTスキャン、MRI、アイソトープ検査などの画像検査によって、容易に診断が可能となっています。
嚢胞以外の腎尿路の形態異常、おもに膀胱尿管逆流症(ぼうこうにょうかんぎゃくりゅうしょう)の合併を見つけるためには、排泄時膀胱尿道造影(はいせつじぼうこうにょうどうぞうえい)(カテーテルで膀胱内に造影剤を注入したのち、排尿させて、尿の流れを観察する)を行ないます。
[治療]
従来は悪性腫瘍(あくせいしゅよう)や高血圧の合併があることから、発見されると腎臓の摘出が行なわれていました。しかし、これらの合併の頻度がきわめて少ないことから、最近では、放置しておくことが多くなっています。
また、経過観察中に、嚢胞が自然に縮小したり消失することもあります。ただし、観察中に尿路感染や腹部の圧迫症状が現われたときには、腎摘出が行なわれます。
対側、すなわち嚢胞のない腎尿路に嚢胞以外の異常がおこる割合は、20%から45%といわれています。その多くは膀胱尿管逆流症や水腎症(すいじんしょう)です。そのため、この病気の予後は、これら合併症の管理と治療によるところが多くなっています。