水腎症(読み)スイジンショウ(その他表記)Hydronephrosis

精選版 日本国語大辞典 「水腎症」の意味・読み・例文・類語

すいじん‐しょう‥シャウ【水腎症】

  1. 〘 名詞 〙 先天的、または後天的に尿管が狭くなったり、ふさがったりして、膀胱へゆくべき尿が腎臓にたまり、腎臓が腫れる病気。腎臓部に鈍痛や不快感があり、腎機能の低下を起こす。

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家庭医学館 「水腎症」の解説

すいじんしょう【水腎症 Hydronephrosis】

腎盂(じんう)や腎杯(じんぱい)に尿がたまる
[どんな病気か]
 尿路のどこかに流れの悪い場所があると、腎臓(じんぞう)でできた尿がたまり、内部の圧力が上昇して、腎盂、腎杯が尿でいっぱいになって拡張してきます。
 腎臓の組織(腎実質(じんじっしつ))は、内側から被膜(ひまく)に押しつけられるように圧迫され、血流が障害されますが、これが続くと、腎実質が萎縮(いしゅく)してきます。
 このように、尿の圧力で腎盂腎杯が拡張し、腎実質の萎縮がおこっている状態を水腎症といいます。
 腎実質が薄くなるので、腎臓の機能は低下していきますが、早めに尿の流れがよくなれば、機能はほとんどもとどおりに回復します。
 水腎症がさらに進行すると、腎臓全体がふくらんだ袋のよう(嚢状(のうじょう))になります。
 そして、これが両方の腎臓におこれば、慢性腎不全(まんせいじんふぜん)(「慢性腎不全」)となり、尿毒症(にょうどくしょう)(「尿毒症」)に移行します。
 尿の流れをふさいでいる部位が、膀胱(ぼうこう)より腎臓に近いほう(上部尿路(じょうぶにょうろ))にあれば、片側の腎臓に水腎症がおこり、膀胱より尿道に近いほう(下部尿路(かぶにょうろ))にあれば、両側の腎臓に水腎症がおこります。
[原因]
 尿路の通過障害をおこす病気は、なんでも水腎症の原因となります。
 水腎症は、大きく先天性(生まれつき)と後天性の2つに分けることができます。
 子どもの水腎症は、先天性の病気でおこるものが大部分で、中年以降のおとなでは、後天性の病気でおこるものが多くなります。
 生まれつき尿路の狭窄(きょうさく)をおこす病気のおもなものは、腎盂と尿管の移行部および尿管と膀胱の移行部にみられる狭窄、尿管瘤(にょうかんりゅう)(「尿管瘤」)、尿管異所開口(にょうかんいしょかいこう)(尿管開口異常(にょうかんかいこういじょう)(「尿管開口異常」))、尿道弁(にょうどうべん)、尿道狭窄(にょうどうきょうさく)(「尿道狭窄」)、強度の真性包茎(しんせいほうけい)(「包茎」)などがあります。
 また、膀胱尿管逆流(ぼうこうにょうかんぎゃくりゅう)(「膀胱尿管逆流」)や、二分脊椎(にぶんせきつい)(脊椎披裂(せきついひれつ)(「脊椎披裂(二分脊椎)」))、髄膜瘤(ずいまくりゅう)などによる神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)(「神経因性膀胱」)も、尿の停滞をおこします。
 これら原因となる病気については、それぞれの項目を参照してください。
 後天的な原因としては、直接尿路内に閉塞(へいそく)をおこすもの(原発性)と、周囲の臓器の病気が尿路におよんだり、圧迫したりして、閉塞(へいそく)をおこすもの(二次性)があります。
 原発性のものとしては、腎結石(じんけっせき)や尿管結石(にょうかんけっせき)などの尿路結石(にょうろけっせき)(「尿路結石」)、腎盂がん、尿管がん(「腎盂がん/尿管がん」)、膀胱がん(「膀胱がん」)などの尿路のがん、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)(「前立腺肥大症」)と前立腺がん(「前立腺がん」)、感染や損傷によっておこる尿路の狭窄などがあります。
 二次性のものとしては、大腸がん(コラム「大腸がん」)、直腸がん(「直腸がん」)、子宮がん(「子宮がん」)などの尿路への転移、排尿神経の障害による神経因性膀胱がおもなものです。
[症状]
 尿が突然に流れなくなり、腎盂腎杯内の圧力が急に上昇して、腎臓の表面をおおっている被膜(ひまく)が引き伸ばされると、腎臓のある背中からわき腹にかけて、持続する強い痛みを感じます。
 尿路の閉塞が不完全で、徐々に腎臓の拡張がおこる場合は、腰部に軽い鈍痛がみられたり、無症状のこともあります。
 腎臓が大きくなると、まわりの胃や腸を圧迫するため、気持ちが悪くなったり(悪心(おしん))、嘔吐(おうと)など、消化器症状がみられることもあります。
 子どもでは、腹部がふくらんで、偶然に腹部の腫(は)れとして発見されることもあります。
[検査と診断]
 水腎症の有無は、腹部の超音波検査で簡単に調べることができます。
 水腎症であることが確認されたら、つぎに、その程度や尿路の閉塞部位を調べます。
 水腎症の程度は、尿・血液検査によって腎臓の機能を調べたり、静脈性腎盂撮影(じょうみゃくせいじんうさつえい)、CTスキャン、腎シンチグラフィなどの画像検査によって、腎盂の拡張の程度、腎実質の厚さを調べるなどして、判断します。
 また、尿路造影(腎尿管、膀胱、尿道)により、閉塞部位を診断します。
◎治療法は原因と程度による
[治療]
 水腎症の原因と程度によって治療法がちがってきます。
 腎実質の厚さがある程度あって、閉塞をとりされば、腎臓の機能が回復されると期待できるときは、腎臓を摘出せず、できるかぎり残すようにします。
 こういう場合、原因となった病気を治療し、腎盂・腎杯にたまっていた尿が抵抗なく流れるようになると、腎盂の内圧が下がって、機能は回復します。
 ときには、一時的に拡張した腎盂に管(カテーテル)を直接入れて尿を排出し、腎臓の機能を回復させてから、原因となっている病気を治療・手術することもあります。
 腎臓を残しても腎臓の機能の回復が望めないときは、反対側の腎臓の機能が十分にあるのを確認してから、水腎症になったほうの腎臓を摘出することもあります。
[日常生活の注意]
 腎臓を摘出せずにすんだ場合でも、定期的な観察が必要なので、指示された通院をするようにしてください。

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改訂新版 世界大百科事典 「水腎症」の意味・わかりやすい解説

水腎症 (すいじんしょう)
hydronephrosis

尿管,膀胱,尿道など尿路に通過障害があり,尿の流れが円滑でないと,それより上方の腎盂(じんう)や腎杯に尿の停滞が起こり,内部の圧力が上昇する。このため腎盂や腎杯は拡張し,腎臓は全体として腫大する。このような状態を水腎症と呼ぶが,拡張した部位によって水腎杯,水尿管などと呼ばれることもある。拡張した腎盂内には尿がたまっているが,その程度はわずかなものから数lに及ぶものまである。拡張の程度に応じて腎機能も障害される。尿路の通過障害が起こる原因は,先天性尿路奇形,尿路結石,膀胱癌,神経因性膀胱機能障害,前立腺癌などさまざまである。症状は側腹部の鈍痛や腫瘤などで,ほとんど症状のないこともある。しかし停滞した尿には感染や結石が発生しやすいので,このような合併症を伴うと発熱や疼痛が起こる。治療は,原因となっている尿路通過障害をとり除くのが原則で,主として手術が行われる。腎臓の拡張が高度な場合は,通過障害が除去されてもなかなか元に回復しないので,腎臓の摘出もやむをえないことが多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水腎症」の意味・わかりやすい解説

水腎症
すいじんしょう

尿が停滞して腎盂(じんう)腎杯が拡張し、腎実質がそのために萎縮(いしゅく)した状態をいい、腎機能の低下を伴う。すなわち、腎盂の尿管移行部から尿管下端までの間に狭窄(きょうさく)、結石、腫瘍(しゅよう)などの尿流通過障害があると、同側の腎盂腎杯内に尿が充満して内圧が上昇する。その結果、閉塞(へいそく)部位のすぐ上流側から拡張が始まり、しだいにそれが上方へ及んで腎盂腎杯に達すると、腎実質は拡張した腎盂腎杯に圧迫され、すこしずつ萎縮していく。これが水腎症とよばれる状態で、腎実質が乏しくなるにつれて腎機能は低下する。大きな膀胱(ぼうこう)腫瘍や膀胱結石があったり、結核性萎縮膀胱や前立腺(せん)腫瘍あるいは先天性尿道狭窄など膀胱以下の下部尿路に通過障害があると、水腎症は両側性となる。

 慢性の水腎症では無症状のことが多いが、結石などにより急激に水腎症がおこると、側腹部に圧痛や仙痛をきたす。診断は静脈性腎盂造影(IVP)による。治療は原因疾患の除去が原則である。尿管狭窄による水腎症では、狭い部位の位置によって、腎盂形成、尿管膀胱再吻合(ふんごう)、他側の尿管への端側吻合などが行われる。腎実質が極端に萎縮して腎機能が大部分失われている場合には、摘出してしまうか、無症状なら放置しておく。

[松下一男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水腎症」の意味・わかりやすい解説

水腎症
すいじんしょう
hydronephrosis

腎杯水腫ともいう。尿路の通過障害のために腎盂に尿がたまり,腎盂と腎杯が拡張して,その内圧により腎実質が萎縮し,腎機能が低下する状態をいう。先天性と後天性とがある。先天性は小児期に発病するが,症状が不定のため,腎盂炎などから発見される。後天性は尿管結石によるものが最も多い。一般に片側のみの水腎症では症状が軽く,腰部の重圧感,鈍痛程度であるが,両側性の場合には,ほかに腎不全の症状,貧血,倦怠感,食欲不振などもあり,腎盂炎を併発すると尿毒症になりやすい。

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