大衣(読み)ダイエ

デジタル大辞泉 「大衣」の意味・読み・例文・類語

だい‐え【大衣】

《「たいえ」とも》三衣さんえの一。九条ないし二五条の袈裟けさ僧伽梨そうぎゃり

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精選版 日本国語大辞典 「大衣」の意味・読み・例文・類語

たい‐え【大衣】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「え」は「衣」の呉音 )
  2. 広袖の衣(きぬ)普通より大きく仕立てたものの総称。普通には賜祿の料とし、仕立て直して着用するか、時にはそのまま使用した。
    1. [初出の実例]「殴傷氏則妻下毛野屎子。及従女大田部西子。即奪取屎子所着之大衣一領。自被逃去」(出典:日本三代実録‐仁和二年(886)五月一二日)
  3. 奈良・平安時代、京の近国に居住する隼人(はやと)の二人をえらんで補任したもの。隼人の長。隼人を統率し大衣を著して朝廷儀式などに参列する。大衣隼人。
    1. [初出の実例]「山城国人右大衣阿多隼人逆足、賜姓阿多忌寸」(出典:続日本後紀‐承和三年(836)六月壬子)
  4. ( 「だいえ」とも ) 三衣の一つ。九条ないし二十五条よりなる袈裟で、布の条数に九種の差があるから、九品の大衣ともいう。町や王宮に行くとき、あるいは授戒のときなどに用いる。僧伽梨(そうかり・そうぎゃり)。〔十巻本和名抄(934頃)〕 〔大乗義章‐一五〕

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世界大百科事典(旧版)内の大衣の言及

【袈裟】より

…すなわち僧伽梨(そうぎやり),鬱多羅僧(うつたらそう)と安陀会(あんだえ)の三つである。僧伽梨は大衣,重衣ともいわれ正装衣に,鬱多羅僧は上衣として礼仏や説法の聴聞に着用し,安陀会は内衣と称して日常の作業や肌着用に用いられた。仏教の北方流布とともに,規定の三衣のみでは身体の保温がたもてないために,下着を着用することになり,これは後に法衣(ほうえ)となった。…

【三衣一鉢】より

…三衣とは,一番下に身に着けるアンタルバーサantarvāsa(下衣。安陀会(あんだえ)と音写される),その上に着るウッタラーサンガuttarāsaṅga(大衣。鬱多羅僧(うつたらそう)),そして時にさらにその上に着るサンガーティsaṃghāṭi(重衣。…

【如来】より

…現存作品に見られる形像上の一般的な特色は,およそ次の諸点である。頭頂が1段盛り上がっている(肉髻(にくけい)相),頭髪1本ずつが右回りに貝のように巻いている(螺髪(らほつ)),額の中央に1本の白く長い毛が螺髪のように右回りに巻いている(白毫(びやくごう)相),耳が大きく耳朶(じだ)が長い,手の指の間は水鳥の水かきに似ている(縵網(まんもう)相),輪宝(りんぼう)の形が足の裏(あるいは手のひらにも)に現れる(足下二輪相),胸部に卍字が現れる,両肩が丸々として豊かである(肩円好相),全身が金色である(金色相),全身を包む光が頭部(頭光(ずこう))と身体(身光(しんこう))の背後に表される(丈光(じようこう)相),衣服は大衣(たいえ)を着るが,甲冑のような厳身具は身につけないことなどがおもな特色である。大衣は当初から無地の布として表現され,日本の場合,中世以降でもそれに従った作例が多いが,中国で造像された如来像の中には,大衣に装飾文様を加えた例が見られるようになる。…

※「大衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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