天の夕顔(読み)テンノユウガオ

関連語 新潮文庫 夕顔

日本大百科全書(ニッポニカ) 「天の夕顔」の意味・わかりやすい解説

天の夕顔
てんのゆうがお

中河与一(よいち)の中編小説。1938年(昭和13)『日本評論』新年臨時号に発表される。63年(昭和38)12月の雪華社版が定本。龍口(たつぐち)という男の独白体により、年上人妻との悲恋を描く。大学生の龍口はすでに人妻であった下宿先の娘あき子と知り合い、以来二十余年もの間、姉弟のような至純の距離を保ちつつ苦しい交際を続ける。最後に誓い合った5年後の再会すら、あき子の死によって果たされない。永井荷風(かふう)が激賞し、ベストセラーとなった作品で、海外にも紹介され親しまれている。

[高橋真理]

『『天の夕顔』(新潮文庫・旺文社文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の天の夕顔の言及

【中河与一】より

…30年《形式主義芸術論》を世に問い,同年月刊雑誌《新科学的》を創刊。古典的抒情に富む《天(てん)の夕顔》(1938)は永井荷風が激賞し,英・独・仏訳された。自伝小説に《足と煙草》(1982)がある。…

※「天の夕顔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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