夫な(読み)セナ

デジタル大辞泉 「夫な」の意味・読み・例文・類語

せ‐な【夫な/兄な】

《「な」は接尾語女性が、夫・恋人または兄弟など親しい男性をいう語。
「ま遠くの野にも逢はなむ心なく里のみ中に逢へる―かも」〈・三四六三〉

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精選版 日本国語大辞典 「夫な」の意味・読み・例文・類語

せ‐な【夫な・兄な】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「な」は接尾語 )
  2. 女性が、夫・恋人である男性または兄弟など、広く男性を親しんでいう語。せなな。せなの。せこ。
    1. [初出の実例]「倭迹々姫命夫(セナ)に語て曰せり」(出典日本書紀(720)崇神一〇年七月(北野本訓))
    2. 「草枕旅行く世奈(セナ)が丸寝せば家(いは)なる吾は紐解かず寝む」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四一六)
  3. 夫婦の仲をいう。〔名語記(1275)〕
  4. 後世、特に、兄をさしていう。
    1. [初出の実例]「いきているせなや舎弟にむつましくして」(出典:談義本・当世穴穿(1769‐71)四)
  5. 若い男。若い衆。また、愛人である男。
    1. [初出の実例]「から馬で今年も帰る下女がせな」(出典:雑俳・柳多留‐七(1772))

夫なの語誌

上代の「せ」が兄弟や夫を含めて広く身近の男性を指したところから、「せな」の意味用法も同じひろがりを示している。上代の東国方言だったらしく、類義語「せろ」とともに「万葉集」の用例は東歌と防人歌に集中している。

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