日本大百科全書(ニッポニカ) 「女性ホルモン剤」の意味・わかりやすい解説
女性ホルモン剤
じょせいほるもんざい
女性ホルモンを製剤としたもの。女性ホルモンは動物の雌性ホルモンに相当するもので、女性の卵胞から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)と、黄体から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種がある。
卵胞ホルモン剤には、卵胞から分泌されるエストラジオールおよびその代謝産物であるエストリオールが用いられる。エストラジオールは経口投与で肝臓で分解されるので、エチニルエストラジオールとして経口投与するほか、エステル化して、油性注射剤あるいは水性懸濁注射剤として投与される。これら天然卵胞ホルモン剤のほか、卵胞ホルモン作用の強力なスチルベン誘導体が発見され、合成卵胞ホルモンとして経口的にも使用されている。卵胞ホルモン剤の適応は、無月経、月経困難症、子宮発育不全、更年期障害など卵胞ホルモン不足による諸症状の改善であり、エストリオールは腟炎(ちつえん)、子宮頸管(けいかん)および腟部びらんに用いられ、結合型エストロゲンは止血剤に、合成卵胞ホルモンであるリン酸ジエチルスチルベストロール、ヘキセストロールは前立腺癌(せんがん)にも使用される。エストラジオール製剤には安息香酸、シピオン酸、ジプロピオン酸、ワレリアン酸エステルがある。
黄体ホルモン剤には切迫流早産、機能性子宮出血などが適応症であり、プロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸クロルマジノン、ジドロゲステロンのほか、合成黄体ホルモン剤として酢酸メドロキシプロゲステロン、ジメチステロン、ノルエチステロン、アリルエストレノール、プレグナンジオールなどがある。プレグナンジオールはにきびの治療に用いられる。また卵胞ホルモン、黄体ホルモンの合剤は避妊薬として使用される。
[幸保文治]